「私は白桜様を推している身……一介のファンが白桜様の友達になど……!」
わなわなと震える両手を見つめる月音。
煌はいい加減慣れてきた。
「黒藤先輩とは友達じゃん」
「黒藤様のことを知ってはいたけど、お姿を見たこともなかった方で……なんというか、私の白桜様推しには年季が入ってるから……その差はあるみたい」
そして月音は真剣な顔でうなずく。
「ああ……初等部からだっけ」
そんな年から憧れていたら、そりゃこじらせるわな。
白桜も罪作りな……まあ、奇行を繰り返しているのは月音が一方的に悪いのだが。
煌は白桜とも普通に喋れるので、自分が月音の奇行に付き合っていたことを、後で詫びておこうと決めた。
「でも、なんで脅されたなんて言い方になるの? 月御門、友達になって、って言っただけっしょ?」
「それが……」
それまで興奮しまくっていた月音の様子が急に冷えた。
不思議に思って煌は首を傾げた。
「その……なんというか……それを言ったときの白桜様が、めちゃくちゃ黒い雰囲気で、瞳の奥が笑っていなかったの……あれは、脅している目だった……」
「え……月御門が実は腹黒とか……?」
月音の証言に、煌は一瞬固まってしまった。
「あるかもしれない。白桜様、実は腹黒説」
「――という仮説が立ったら、月音ちゃんはどうするの?」
「白桜様が腹黒だったら……推せる!!」
「うん、予想通りの反応ありがとう。なら特に問題なくね? 月音ちゃんの推し活に文句つけられたりやめるよう言われたわけでもないんだろ?」
「まあ、そうなんだけど……一介の私が白桜様のと、と、友達だなんて……緊張で吐きそう~……うぅ」
「落ち着け!? ほんと目が離せないな!」
「うん、月音さんって可愛いよね」
「いやそういう意味じゃなくて――そういう意味もあるけど――うん?」
突然割って入った声に、煌ははたと行動を止めた。
月音を介抱するように背中に手を当てていたところへやってきたのは渦中の人物、白桜だった。