「あ、それとは違って――その、白桜様の秘密を黒藤様から聞いちゃったやつ。あれに関してはちょっと怒るって」

「あ……」

そうだ。黒藤から、白桜が本来は女性だったと聞いたのだった。

煌はそんな話を知っていても正直誰に話すことでもないし、家同士の関係に繋がる月音のような立場でもないので、記憶の隅に放っておいてしまっていた。

「確かに、勝手に聞いちゃまずいやつだったよな……」

「それで、『俺とも友達になって』――って言われたの」

月音の頬を上気している。普通は友好的な話だが、月音に換算すればそれも『脅し』の内容になってしまうのか。

(ちょっと月御門が可哀そう)

「……月御門らしい許し方というか……まあ月音ちゃんなら、月御門にそんなこと言われたら発狂するよね」

「するよね! 私、間違ってないよね!?」

「月音ちゃんの常日頃が間違ってるから、うんとはうなずけないね。で? なんて答えたの?」

答えた結果、煌に突撃してきたのだろう。

月音は大きくうなずいた。

「そりゃもちろん――……あれ? なんて答えたんだ? 私」

「え……記憶喪失?」

話的に、ついさっきのことのように聞いていたが……。

「に、なってるかもしれない。若干。白桜様にそう言われて、小田切くんのとこに飛び込むまでの記憶がない……」

「………」

うぬぬぬ、と月音が両手で頭を抱えて苦悩しだした。

どんだけ勢いで行動しているんだ。

でも、月音の白桜慕いならばそのくらい当たり前と言えてしまうかもしれない。

「……月御門のことぶっ飛ばしたりしてない?」

「さすがにそれはない! と思う! ……よ?」

疑問符なのか。

月音がなんと答えたのか、これは白桜本人か、百合緋あたりに確認しておいた方がいいだろう。

「ところで――月音ちゃん的にはいいの? 月御門と友達になること」

「……よかないっ!」

またもや牙をむく勢いの月音。

やっぱりね、と糸目になる煌。