「おー」

「てらー」

煌は月音を支えるようにして、廊下へ連れ出す。

「神崎はなんだ? 煌に懐いてんのか?」

「餌付け……とかはしてるように見えないけど……」

「今のは介護してるようにしか見えねーんだけど」

――煌と月音の間に、色っぽい雰囲気は皆無だったようだ。





「はい、深呼吸して」

「すーっ、はーっ……」

煌に言われるまま、呼吸を整える月音。

何回か繰り返しているうちに落ち着いてきたようだ。

「で? 話せる? どうしたの」

煌の問いかけに、月音は牙をむく勢いで振り仰いだ。

「白桜様に脅されたの!」

「………は?」

月音がめちゃくちゃ興奮した顔で言ってきた。

煌、思いっきり胡乱な顔になった。

――月音は今まで白桜と接触していなかったはずだ。

だからまず、なんで白桜と話している? と疑問に思ったが、常日頃の自分と月音の行動に疑問を持つべきは白桜だと思い至った。

そしてその行動の代償として、脅されても正直文句は言えない立場にいる自分たちな気がする。

煌もサーッと青ざめた。

「え……ストーキングがバレたの?」

「バレてた――と言うか、気づいてて何も言ってこなかったみたい。自分に用事があるなら話しかけてくるだろうと思ってた、って言ってた」

「………」

気づいて放置しているパターンだったか。

「それで……つけまわしていたのをネタに脅された?」