「まあ、あんだけ見目麗しい二人がつるんでりゃ目立つよな」

「ふっふっふ、ついに小田切くんもお二人がお美しいと認めたね……!」

「いや別に否定もしてないよ、最初から」

はあ、とため息をつく煌。

「そうだ月音ちゃん、俺今週週直でさ」

「あ、そうだったね。お疲れ様です」

「うん、そんで教員室行ったとき聞いちゃっただけど、影小路って名前の先輩が転校してくるらしいんだ。……月音ちゃん?」

「か……影小路……!?」

壁についていた月音の両手が震えだした。

「え、大丈夫?」

「大丈夫じゃないよ! まさか……影小路の黒藤様……!?」

「ああ、確かそんな名前だった」

「うおおおお! まさかまさかだよ! 御門流当主の白桜様と、小路流次代の黒藤様が学園に揃うなんて……!」

「え、有名人なの?」

びっくりする煌。月音は前のめりになって説明した。

「めちゃくちゃ有名人! あ、私たちの界隈では、だけど。……陰陽師二大大家は、白桜様の月御門と、もうひとつが影小路っていうの」

「その家の人なんだ」

「その通り。で、そこの次の当主様に内定しているのが、黒藤様。確か私たちの一つ年上だったはず」

「へえ」

特に感想がなさそうな煌に構わず、月音は両手をワナワナさせる。

「推しが……推しが増えてしまう……!」

「やっぱり先輩も推しになる予定なんだ」

「その通り! だって当代最強と言われる方なんだよ黒藤様! 私には天上の存在だよ……!」

「最強? 強いの? 影小路先輩」