「はい……」

どうしよう、怒られるかな、これ。

小田切くんは完全に巻き添えだから私が護らないと――と頭を必死に動かしていると、しかし白桜は泰然とした様子だった。

「あいつが話して大丈夫だと判断したなら、俺は何も言わないよ。それを承知で、黒の言動に見張りもつけていないし」

……え? 怒られ……ない? 

それに返す月音の声は、緊張の反動から気が抜けていた。

「……よろしいのですか?」

「うん。黒は人の悪意や邪気に敏感だから、もし神崎さんや小田切にそんな素振りがあったたら、まず友達にもなってないよ。だから、心配はしない」

はっきりと言い切った白桜。

黒藤へは――確かな信頼があるようだ。

(黒藤様……完全に脈なしでもないかもしれません……)

そう思ったとたん、白桜の表情に影が宿った。

「ただ、勝手に話されたことにはちょっと怒ってるかな」

「もっ、申し訳ありません……!」

やはり怒らせてしまった! 月音が慌てて頭を下げると、頭上からくすりと笑う声がした。

「じゃあ神崎さん、俺のお願いも聞いてもらえる?」

「は、はい! なんなりと!」

むしろ白桜のお願いを聞けるなんて自分に降りかかるわけがないと思うほどのことだ。

全力で叶えよう――

「そうだね――俺とも友達になって」

にっこり微笑みの白桜。

……月音は歓喜するとともに、その向こうにほの暗いものを見た気がした。

……白桜、実は腹黒説、ある?


+++


「小田切くーん!!!」

「うわっ! な、なに!? どうしたの!?」

教室で友達と昼食を広げていた煌に月音が突撃すると、煌はびっくりして食べていたパンを落とした。

幸い袋に入った状態で落ちたので、煌は拾い上げながら月音を見やる。

「月音ちゃん?」

「あう、あう、あう……」

「大丈夫じゃないね……」

それどころか、虫の息とはこれか、という感じだ。

「ちょっと外行って来る」