「……なんすか先輩、その顔は」

「いや~? 煌って実はツンデレなんだなって」

「そ、そんなことないっすっ。黒藤先輩だって本当はすごくいい人なのに月御門への言動だけでマイナス点たたき出してますよ」

「俺は友達とかいなくても構わないから、気にしないな。煌と月音は知ってて友達でいてくれるし。俺の評判なんてもともと散々なんだよ」

「……陰陽師的な?」

「そ。で? 煌いい加減白状しろよー? 碧人に気に入られるようにお膳立てもしてやれるぞ?」

「な、なんで月音ちゃんのお父さんに気に入られるんですかっ、俺がっ」

「ふーん?」

黒藤はにやにやを止めない。煌はなんだか悔しい気持ちになった。

黒藤が、自分の知らない自分の気持ちを見透かしているようで。

「まあ、煌がいいんなら俺は無理には何もしないよ。月音はいずれ、碧人も認めた奴を婿養子にして、神崎の名と血を繋いでいかなくちゃいけない存在だ。月音は神崎流を弱小流派とか言うけど、実際には希少種だから絶えては困る一族だからな」

「え……」

――その話は、先日も聞いたはずだ。

月音は結婚して次を繋がなければいけない。

それが自分の役目だとも言っていた。

「………」

月音たちがいるのが、自分が生きてきた世界とは全く違うことは承知していたつもりだった。

それでも友達になりたいと思ったのも。

(でも俺、月音ちゃんから何も聞いてない……)

それはそうだ、と脳内で肯定する言葉も浮かんだ。

月音は家のことを友人にも話していないと言っていた。

煌は月音の友人だ。

霊媒体質の煌を助けてくれたことをきっかけに家のことは教えてもらったけど、本来ならそれすら知らなかったはずだ。

なのに、なぜ心はもやもやする?

考え込む煌を、黒藤は穏やかな眼差しで見つめていた。

自分にも一瞬だったけど、こんな時期があったなー、と。