「ほかの人には言わないでよ? 小田切くん。白桜様が公言していないことが学園に広まるのは、白桜様お慕いしまくりクラブとしてはゆるせないから」
「なにそのやばい感しかないクラブ。摘発されない?」
煌の質問に、月音は神妙な顔でうなずく。
「御門流にバレたら、摘発される」
「されるんだ。ファンクラブ的なものだから大丈夫って言ってほしかったんだけど。んで? 白桜サマお慕いしているクラブ? は水旧もお慕い対象なんだ?」
「白桜様と百合緋様は、私の推しだからね。ああ、日々推しと同じ空気を吸える環境! 私、この年齢に生まれてよかった……!」
「まさかのクラスメイトを推し発言。俺、月音ちゃんが陰陽師だってことよりも月御門を推しだって言う方にびっくりしてるんだけど」
「推しはいいよ、小田切くん。適度な推し活は心の潤いだよ」
「クラスメイトに心の潤いもらってるとかすげえ状況。そんなこと言ってて、告白しなくていいの?」
「え? 白桜様と百合緋様に、今日も推させていただいてありがとうございます、って?」
「いや、愛の告白」
「あいの?」
「好きですって言わなくていいの? ってこと」
「………?」
月音、三秒ほど黙ってから首を傾げた。
「あ、もしかして小田切くん、私が白桜様に恋慕(れんぼ)してると思ってる?」
「違うの? お慕いしてるって言いまくってるじゃん?」
「お慕いしてるけど、どっちかっていうと、『お慕い』じゃなくて『推したい』んだよね。恋慕じゃなくて、白桜様と百合緋様がくっつかれるのを見守りたいの」
「どこまでも推し活だと」
「その通り! あ! 白桜様と百合緋様が四阿(あずまや)で隣り合って座っていらっしゃる……! 違法でなければ写真に収めたい所存……!」
「……ねえ月音ちゃん」
嬉々と白桜たちを見ている月音に、煌は固い声音で呼びかけた。
「なにかな、小田切くん」
「もしかしてだけどうちの学校って月音ちゃんみたいな子、多いの……?」
「うーん? どうだろう……白桜様が陰陽師の大家のご当主様だって知ってる人は知ってるけど、私みたいに推し推し騒いでいる人だけじゃなくて、白桜様や百合緋様にガチ恋の人も多いと思うよ? 現に報道部集計の、『学園告白され人数ランキング』ではツートップだし」