「あははー、今日も月音は面白いなー」

縁と連れ立ってやってきた黒藤は、学校での変人のかけらもない。

爽やかな無地のシャツにベージュのスラックス。背も高くスタイルもいいので、シンプルな恰好がかえって素の格好良さを際立たせていた。

一方、縁の隣を堂々と歩くと宣言していた月音は、縁に対して「眩しい」「月の女神様か」と混乱ぶりを連呼している。

初めて休日に逢う月音は、すとんとした形の淡いオレンジ色の膝丈のワンピースで、肩にショルダーバッグをかけていた。

煌はTシャツにパーカー、ジーンズにボディバッグを前掛けという服装。

ゴテゴテした格好が苦手でアクセサリーにも興味がないため、友達と出かけるときもこんなラフな格好だ。

さっぱりしていて煌らしいと言われるが、この顔面偏差値集団の中に混じっては気後れしてしまう。

月音も、学年の中に月音に想いを寄せる男子が複数いると聞いたことがあるくらいには可愛い系だ。

「ふふ、二人とも可愛らしいね、黒藤」

「いい奴らだよ」

物陰に隠れるため逃げ出そうとする月音の腕を捕縛している煌と月音を見て、そんなことを言い合っている黒藤と縁。

「ほら、もう行くよ月音ちゃん」

「無理~、縁様が神々しすぎて……」

「クレープ、月音ちゃんだけ食べらんなくなるよ?」

「はっ!」

煌の言葉で意識が現実に向いたらしい。

そしてクレープが月音に与える影響がすごかった。

「……小田切くんの隣歩いていい?」

「……っ」

心細げに言われて、煌は一瞬ドクっと心臓が鳴った。

「は、はいはい。月音ちゃんが物陰に隠れないように隣にいるから、ほら行くよ」

ともすれば顔がにやけそうになるのを抑えて、先を促した。

月音はちまちました足取りで煌の隣に立って、一度黒藤と縁へ視線を向けたが、すぐさま下を向いてしまった。

それを縁はどう思ったのか、そして黒藤からなんと聞いていたのか、回り込んできて月音の隣に立った。

「月音ちゃんの隣歩いちゃお」

「ぐふっ!」

月音がうめき声をあげて心臓の辺りを抑えた。

あの、トドメ刺さないでほしいのですが……。