「先輩、今度三人で出かけたりしましょう! 月音ちゃんとクレープ食べに行こって話してたんすよ」
「あ、いいね。行きましょう! 私、物陰から小田切くんと黒藤様を見守りますね!」
「待って月音ちゃん俺黒藤先輩と二人っきりになりたいわけじゃないからそこは俺の隣にいて!」
一息に言った煌に、月音はきょとんとした目を向ける。
「でも私、基本的に物陰に隠れる生き物だから……」
「そんな吸血鬼みたいなこと言ってないで堂々と日の下を歩いて!? 俺は月音ちゃんの推しじゃないんだから見てても楽しくないだろ?」
「黒藤様が誰かと絡んでいるだけで、相手が誰でも推せる」
「生粋のファンだな! はー、黒藤先輩、これ月音ちゃんが表に出て歩くことを前提での誘いですからね?」
「はは、月音も煌も面白いなあ。あ、なら縁(ゆかり)も連れて行っていいかな? 俺の式なんだけど、見た目ふつーの人間の女性で、俺らよりちょっと年上に見られるくらいなんだけど、どう? あいつ甘いもの好きだから、俺だけ行ったら文句言われそうで」
黒藤の式、というワードに、月音の耳が大きくなった。
「そんな……! 黒藤様とお近づきになっただけでなく、式殿と一緒にお出かけできるなんて……! ありがとう小田切くん! 私、堂々と縁様の隣を歩くよ!」
「あ、うん……」
堂々と自分の隣を歩いてもらいたかったのが本音の煌は、まだ見ぬ黒藤の式にちょっと妬いた。
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「ま、眩しい……!」
「落ち着こうね、月音ちゃん」
今日も今日とて、隙あらば物陰に隠れそうな月音の腕をもはや掴んでいるしか選択肢のない煌。
女性に安易に触れるのはいかんだろうどうのは自分たちには――月音の行動力の前には、別次元の話だ。
「はじめまして、月音ちゃん、煌くん。黒藤の二の式の、縁といいます。文字通り縁(えにし)の妖異よ」
そこに立っているのは、煌ですらモデルさんですか? と言いたくなる美女だった。
秋も中ごろを迎える今日は、割と暖かい日だ。
縁はゆったりしたニットにミニスカート、ロングブーツといった出で立ち。確かに大学生くらいに見える。