「え、なになに?」
黒藤も煌のスマホをのぞき込んだあと、自分のスマホに視線をやった。
月音から発信された、黒藤と煌を招待したグループには、『白桜様をお慕いしまくる会』とタイトルがつけられている。
「黒藤様が白桜様をお好きだっておっしゃるから……」
照れ、と右頬に手を添える月音。かわい、じゃなくて――
「俺まで入ってていいの? 月御門のことクラスメイトくらいにしかとらえてないんだけど――」
「いいに決まってる! むしろ小田切くんがいてくれないと、たぶん私と黒藤様だけだと白桜様お慕いしまくりが暴走して逮捕されてる。ありがたきツッコミ役」
「………」
半眼になる煌。
まさかのツッコミ要員としての招待だった。
「あ、それはありがたい。俺も式に、そろそろ逮捕されたときの言い訳考えておけって言われててさー」
「あー、私もよく言われます」
「参加させてもらいます」
煌、すぐさま招待に応じた。
こんな危なっかしい二人を野放しにしておけない。
二人の会話を聞いて使命感みたいなものが燃え出してしまった。
ふと、煌は黒藤へ視線を向ける。
「あの、さっきも言ってたっすけど、『しき』さんって方がいるんすか? 月音ちゃん家にも?」
「人の名前じゃなくて、使役(しえき)のことだよ。式神(しきがみ)って言った方がわかりやすいかな」
「あ、それは聞いたことあるっす」
黒藤の答えにうなずく煌。
式神とか、なんかふるーい呪いのイメージがある。
「陰陽師のね、色々お手伝いをしてくれる存在って感じかな。一般的には妖異――妖怪とか言われる存在が式になるんだ。神に名を連ねるものも式に出来るけど、かなり強い人じゃないと制御できないね」
「月音ちゃんには、いないんだ?」
「うん。私は妖異や霊体が見えて会話ができるだけで正式な陰陽師じゃないから、式は持てないの」
「でも、月音もいずれは婿を取って家、継いでいかなくちゃだろ? 碧人がそんなこと言ってたことある」