「白桜様にアタックするならもう少しお考えになって行動を起こしてくださいませ。白桜様のラブラブな様子を日々楽しみにしているファンの身にもなってくださいませ! 毎日毎日白桜様が暴力を振るうシーンばかり見せられるファンは……めちゃくちゃ妄想がはかどってしまうのです! はかどりすぎて危ないのです! 私バイオレンスは趣味ではないのです! バイオレンスが似合う白桜様など見たくないのです! でも白桜様を見ていたいのです!」
「………へ?」
(………)
月音の鬼気迫る様子に、黒藤はまるで意味がわからんとぽかんとしてしまった。
煌は、とうとうやっちまったー、と片手で顔を覆った。
月音は日頃、壁になりたいと宣言するほど自分が『推し』に関わることをよしとしていなかった。
だが黒藤の登場によって、色々とつけたい文句があふれていたようだ。
「えーと……何言ってんの? 月音……」
煌から見える黒藤の横顔は明らかに困惑している。
それに煌が驚いた。
(えええ、あの黒藤先輩が困ってる? 連日月御門に絡んではぶっ飛ばされてもへこまない鋼鉄メンタルって言われてるのに……最強? とか言われる黒藤先輩を困らせるとか、何気に月音ちゃん最強を上回ってない?)
白桜や黒藤を雲の上の人と言っているけど、その当人にこんだけ不満ぶつけられたらすごいわ。
呆れを通り越して、煌は月音に感心していた。
「……白のファンなの?」
「はい。白桜様と百合緋様をお慕いしまくっております。黒藤様も推しております」
「え……と……そんなこと言う子、初めて会った……えと、煌? 月音は白のことが好きってこと……?」
月音に対して混乱しすぎて、黒藤は煌に助けを求めてきた。
「いや、恋愛感情じゃないらしいっす。月音ちゃんは月御門と水旧を『推し』として、慕っているらしいです」
「……推し?」
「その通りです。不肖わたくし、白桜様と百合緋様がラブラブされていることを物陰からうかがい見るためにこの学園に通っているフシすらありますから」
「白と百合姫が……ラブラブ?」
「あの二人いつも一緒にいて一緒に暮らしてるって話は有名で、許嫁じゃないかって言われてるんです」
煌が説明すると、黒藤は半眼になった。