「あ、クレープ? 好きなの?」

「大好き! うち古い家で洋菓子とかあまり食べられなかったから、外で食べるときは洋菓子が好き。なかでもクレープは大好物なの」

にこにこーっと、今度は月音から笑顔を向けられて、何故か撃退された気分になる煌。
なんか……ヨコシマなこと考えそうになってすんませんした……。

「じゃ、じゃあクレープが美味しい店探しとくよ」

「ありがと! やったー! クレープだーっ」

楽しそうにする月音から視線をそらして、制服のポケットから取り出したスマホで適当に検索画面を開く。なんか……なんていうか……無理。

月音の食欲に負けた煌だった。





「白―!」

「去ね!」

「ぐはっ」

黒藤が、白桜に、殴り飛ばされた。

その様子を壁の影に隠れて見ていた月音は、壁をつかんだ両手にギリギリと力が入る。

「黒藤様……もう少し考えたアタックをなさってくださいませんこと……? いつもいつも一直線に白桜様に突進すれば撃退されるってお分かりになりませんの……?」

「なんでお嬢様言葉になってんの、月音ちゃん」

今日も月音の推し活に付き合っている煌から呆れた声が聞こえた。

黒藤が転校してきて一週間。

黒藤は毎日白桜にアタックして毎日返り討ちにあっている。

そのうち黒藤は、男の白桜に言い寄っていると認識されるようになっていた。

そういった話が好みの女生徒や男子生徒からは応援の視線を送られているようだが、黒藤の転校以来、白桜の機嫌が毎日悪い。

黒藤以外へは穏やかな対応をするのだけど、常から雰囲気がトゲトゲするようになってしまった。

「そんな白桜様も人間らしくて推せる! 白桜様の新たな一面を見せてくれてありがとうございます黒藤様!」

どんな白桜でも推してしまう月音は、黒藤も推すことにしたらしい。

「今は三角関係を見守るのが私の推し活」と、煌に宣言してきた。

いや、ふつーに怖い内容。その推し活。

「煌―、今日も神崎のお守?」