「それはもう! 白桜様と同い年だって知ったときは鼻血出るかと思ったからね。あの月御門家の、当時は次期当主様。私たち弱小流派からしたらそれこそ尊すぎるお方だよ」
熱弁する月音を、煌は半眼で見た。
初等部からコレをやられていて、白桜は気づいていないのだろうか? それとも把握した上で放っておいている?
煌は高等部から斎陵学園に入った一般家庭の出なので、白桜の事前情報なんて全く持っていなかった。
月音が霊体と会話したり成仏させたりを見ていなければ、陰陽師なんてものは歴史上のものだと信じなかっただろう。
――そういえば、と思い出した。
「月音ちゃん、ちゃんとお礼するから何がいいか考えておいてもらえる?」
「お礼? なんの?」
月音の頭の上にクエスチョンマークが浮かんでいるのが見えるようだ。
「月音ちゃんには二回も祓ってもらってるし、そういうのってやっぱり金銭が発生すると思うんだよね」
煌の言葉の意味を、月音はやや遅れて理解した。
「え? あ、あー、そういう。あれに関してお金は発生させないで。父様に怒られちゃうから」
「どして?」
率直に訊き返してきた煌に、月音は目を伏せ気味に、耳に髪をかけなおした。
「私はちゃんと修行を積んだ陰陽師じゃないから、仕事として請けてはだめって言われてるの。父様が私に符を持たせてくれるのも、もし困ったことがあったら使いなさいって意味で持たされているものだし。だから私の考えの範囲内で使うのは自由だから、そう仕事みたいには考えないでほしいんだ」
「そう、なんだ……俺には難しい世界だけど、じゃあ今度一緒に出掛けたに昼飯とかおごらせて。俺も何か礼はしないと気が済まないから」
「………」
月音がきょとんとした顔で煌を見た。
「月音ちゃん?」
「一緒に出掛けるの?」
「え? ……あ」
かあああっと、煌の頬が紅くなった。
月音の性格上そういうところを気にするとは思わずにさらっと言ってしまった。
これではまるでデートに誘っているみたいでは――
「ならクレープがいい! クリームたくさんのやつ!」