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白桜の機嫌が悪い。それはもうめちゃくちゃ悪い。

月音と煌は白桜のクラスメイトでもある。

百合緋は隣のクラスだが休み時間はいつも白桜と一緒だ。
 
つも穏やかにこやかな白桜が朝から機嫌が悪いようで、笑顔なのにめっちゃ暗黒がただよっている。

朝イチからこうなので、意味がわからないクラスメイトたちは戦々恐々としている。意味のわかってしまう月音と煌は冷や汗をかいていた。

余裕で始業前にクラスについた月音と違って、煌はギリギリに教室に飛び込んできた。

すぐに担任が来てしまったためにどこへ行ってきたのか訊きそびれてしまったが……。

――そして一限目の休み時間、煌がこそこそと月音のところへやってきて、廊下へ連れ出した。

二人して窓枠に寄りかかって話す。

「月音ちゃん、あの人やっぱり影小路先輩だった」

「えっ、どこでそんな情報を」

驚きだ。本当に確かめに行っていたのか。

「二年のクラス行って聞いてきた」

「さすが陽キャ」

「今朝のショックは薄らいだ?」

「全然!」

元気よく混乱を隠さずに答える。

煌は苦笑をもらした。

「みたいだね。まあ、月音ちゃんの推し活がどうなるか気になるから、どっか行くとき俺も同行していい?」

「構わないけど……キモいオタクだよ? 私」

「俺にとっては恩人だよ。どっちかって言うと月音ちゃんと一緒だとヘンな――霊的なの寄ってこないから、俺がお得なだけなんだけど」

はは、とまた苦笑まじりに頬をかく煌。

「まあ、私に寄って来るもの好きは相当強い自信がないといないね」

そして月音もそのことを否定しない。

――神崎流の特徴は、その血に宿った強い守護の力だった。