「ぐはっ!」

 やっぱりか、と言わんばかりにはじめは顔をくしゃくしゃにして笑った。短髪で彫りの深い男らしい顔立ちをしているはじめだけど、笑った顔は無邪気な子供のようで可愛いと思ってしまう。

「くうー。へたっぴな歌を大声で響かせていたのか俺は……。せっかく未来の歌手に歌教えてもらってんのに情けない……」
「そう? 恥ずかしがって全然声を出さない人よりかはずっとかっこいいと思うよ」
「でもへたっぴなんだろ?」
「うん、へたっぴ」
「ならフォローになってねえよ!」

 鋭いつっこみに思わず声を出して笑ってしまった。
 だけど私は嘘はついていない。重要なのは技術よりも気持ちだ。拙くても懸命に歌っているのならその想いは誰かに届く。少なくとも私には届いていた。

「ほら、はじめは未来のサッカー選手なんだからもっと堂々として!」
「よっしゃ、任せろ!」
「いや、切り替え早っ!」

 今度は私がつっこむ番だった。