「そだね。別に今日で会えなくなるわけでもないし、少しだけ喋ってから帰ろっか。はじめもこの後サッカー部のみんなとご飯行く約束してるんでしょ?」

「おう」と短く言ってはじめは私の横に並んだ。

「なんか、時間ってあっという間に過ぎるよなあ」
「私も同じこと考えてた。だって付き合ってもう一年以上だよ? 凄いよね」
「ほんとだよ、出会った当初の凛はあんなにツンツンしてたのに、今じゃデレデレだもんな。時間の経過は恐ろしい」
「恥ずかしいからやめて!」
「ははっ、悪い悪い。あ、てかどうだった?」

 主語のない質問に私は「何が?」と訊き返す。

「校歌。結構声出して歌ったから凛にも聴こえてただろ?」
「目立ってたよ。ビブラートかけまくりだったから余計にね」
「おっ。俺のビブラートに気付いたか。凛に教えてもらってから毎日練習してるからな。凛的にはどうよ、俺の渾身のビブラート」
「甘口評価と辛口評価どっちで答えたらいい?」
「じゃあ辛口で! ずばっと頼む!」
「へたっぴだった!」