手紙部の仕事は主に二つ。一つは図書館前に設置している投函ボックスの手紙を回収して学年・クラスごとに仕分けをする。二つ目は仕分けした手紙に消印スタンプを押し放課後教室を回って生徒たちの机に配達すること。
「私と莉可が入部しなかったら廃部するとこだったな」
 私は小さい頃から祖母に手紙部の話を聞いていて、高校生になったら入部しようと心に決めていた。祖父と祖母の素敵な恋物語をきかせてもらったのも大きいが、なにより今のSNSの時代に手書きで互いの想いを伝えあうことが出来る手紙は、これからも残すべきとても素敵な文化だと思う。そして決してパソコンやスマホでは伝えきれない手書きならではの文字の温かさは届けられた人の心に寄り添って、心の根っこまであっためてめてくれると思うからだ。
「あとちょっと」
 傾いてきたオレンジ色の光が窓から差し込んできて手紙たちを優しく照らしていく。私は仕分けの手を早めた。そして最後の一枚になった時だった。
「え?キミ宛?」
 思わず声が突いて出た。最後の手紙は真っ白な縦型の封筒に『この手紙をキミへ』と丁寧な筆致で書かれている。直ぐに裏返すが差出人の記載はない。
「えと、キミって……まさか私?」
 じっと見つめるが私に手紙を送ってくれるような人物はいくら考えても思い浮かばない。まだ恋を知らない私はひとり頬を染めながら暫くその手紙を眺めていた。その時校内に下校を告げる蛍の光が流れてくる。
「やば!急いで配達して帰らなきゃ」
 私はその手紙を鞄に放り込むと慌てて配達へと向かった。