──あれから一年が過ぎて、今年も桜の花が咲く季節がやってきた。私は図書館から見える桜の花を眺めながら手紙の仕分けをしていく。
「綺麗だな……あっ」
その時、私は春風にのって窓辺から手紙の上に舞い降りてきた桜の花びらをつまんだ。
「もう一年か……」
君江が正史と手紙を通じて出会ったのも春だったこともあり、私は桜の花を見れば君江の笑顔を思い出すと共に、二人の青春の1ページを微笑ましく想像してしまう。
「……手紙からはじまる恋か、素敵」
最後の手紙の仕分けを終え、トントンと机の上で手紙を重ねて束ねると私は明日配達予定のトレイに手紙達を仕舞い鞄を抱えた。
「よし、終わった!帰ろ」
そして私が電気を消して、図書館の扉に手をかけたときだった。こちらの気配に気づいてあわてて走り去る人影が扉のすりガラス越しに見えた。
(え? もしかして……)
直ぐにガラッと扉を開いて廊下に視線を移せば野球部のユニフォーム姿の男の子の後ろ姿が見える。走るのが速く、その姿はあっという間に小さくなっていく。
「待って!」
そう後ろ姿に声をかけ、駆け出した私は無我夢中で男の子を追いかけていた。廊下の突き当たりを男の子が角を曲がる寸前で私はもう一度大きな声で叫んだ。
「キミの手紙っ、受け取らせてっ!」
私の声が届いたのか、諦めたのか男の子は立ち止まるとゆっくりと振り返った。私は予想外の顔立ちに目をぱちくりとさせる。
(え?おじいちゃんと違う……)
私が動けずにいると男の子は私の目の前まで歩み寄って、両手でそっと手紙を差し出した。
「……この手紙をキミへ」
頬を搔きながら恥ずかしそうに差し出された手紙には『二年三組 早瀬野乃花様』と宛名が書かれていた。
「えっと、あの……あ、りがと……」
男の子から手紙を受け取りながら私の顔も桜色に染まっていく。
「じゃあ、あの俺は……これで」
男の子は生真面目にぺこりと頭を下げると私の返事を待つことなく再び駆けていく。その後ろ姿を眺めながら、恋の始まりを告げるように私の胸はとくんと跳ねた。
「綺麗だな……あっ」
その時、私は春風にのって窓辺から手紙の上に舞い降りてきた桜の花びらをつまんだ。
「もう一年か……」
君江が正史と手紙を通じて出会ったのも春だったこともあり、私は桜の花を見れば君江の笑顔を思い出すと共に、二人の青春の1ページを微笑ましく想像してしまう。
「……手紙からはじまる恋か、素敵」
最後の手紙の仕分けを終え、トントンと机の上で手紙を重ねて束ねると私は明日配達予定のトレイに手紙達を仕舞い鞄を抱えた。
「よし、終わった!帰ろ」
そして私が電気を消して、図書館の扉に手をかけたときだった。こちらの気配に気づいてあわてて走り去る人影が扉のすりガラス越しに見えた。
(え? もしかして……)
直ぐにガラッと扉を開いて廊下に視線を移せば野球部のユニフォーム姿の男の子の後ろ姿が見える。走るのが速く、その姿はあっという間に小さくなっていく。
「待って!」
そう後ろ姿に声をかけ、駆け出した私は無我夢中で男の子を追いかけていた。廊下の突き当たりを男の子が角を曲がる寸前で私はもう一度大きな声で叫んだ。
「キミの手紙っ、受け取らせてっ!」
私の声が届いたのか、諦めたのか男の子は立ち止まるとゆっくりと振り返った。私は予想外の顔立ちに目をぱちくりとさせる。
(え?おじいちゃんと違う……)
私が動けずにいると男の子は私の目の前まで歩み寄って、両手でそっと手紙を差し出した。
「……この手紙をキミへ」
頬を搔きながら恥ずかしそうに差し出された手紙には『二年三組 早瀬野乃花様』と宛名が書かれていた。
「えっと、あの……あ、りがと……」
男の子から手紙を受け取りながら私の顔も桜色に染まっていく。
「じゃあ、あの俺は……これで」
男の子は生真面目にぺこりと頭を下げると私の返事を待つことなく再び駆けていく。その後ろ姿を眺めながら、恋の始まりを告げるように私の胸はとくんと跳ねた。