『キミへ どうしてもキミとまた手紙のやり取りがしたく手紙を書きました。無事キミの手元に届きますように』
 私はすぐに君江の返信が書かれた封筒から手紙をぴっぱり出した。
『あなたへ 無事に届きましたよ。まさかあなたからまた手紙が貰えるなんて夢のようです。こうして手紙でやり取りしているとあなたと過ごした日々のことを思い出してあなたに会いたくてたまらなくなります』
 私は手紙を持つ手が小刻みに震える。だんだん手紙を開けるのが怖くなる。私は何度も深呼吸してから次の手紙を広げた。
『キミへ キミに会えなくなってもう何十年もたってしまったね。最期に伝えたい事も伝えられないままキミのそばを離れなければならなかったこと今でも申し訳なく思っている。裕介も貴子も奈津子も立派に育ててくれてありがとう。もうすぐ迎えにいくから。正史』
『正史さん いえいえ、苦労だなんてとんでもない。貴方が遺してくれた三人の子供たちのおかげで私は生きる活力をもらったの。貴方と出会えて、貴方のお嫁さんになれて本当に幸せだった。迎えに来てくれるの楽しみに待っています キミ』
(え? 正史って……)
『キミへ この手紙がキミの元へ届く頃、僕らは二人で仲良く並んで雲一つない青空を散歩してる頃だね。キミの沢山のお土産話をゆっくり聞かせておくれ。キミ愛してる。 正史』
 直ぐに手紙は涙の膜でゆがんで見えなくなっていく。
「おばあちゃんの手紙の相手はおじいちゃんだったんだ」
 手紙を貰った時、恋する少女のように顔を桜色に染めた君江を思い出す。私は涙でぐしゃぐしゃになった顔を袖で拭うと、窓の外から見える雲一つない青空を見上げた。