絆の責任感と優しさにつけこんでいるサイテー野郎なんて、愛想つかされても仕方がない。
真面目なんだか不真面目なんだかわからない学生時代を経て、俺は龍さんの後継者になることを決めた。
いつだったか、俺の生い立ちやりゅうのこと、絆には話した。
鬼ごっこでつかまって、雑談の流れだったかな? 静かに聞いてくれたっけ。
そんで、なんも言わなかった。「うん」て、肯いてくれただけで。
その反応が俺には心地よかった。
下手に慰められても困る。
別のそのことに対して思っていることも悩んでいることもなかったし、慰めという対応は場違い。
泣かれても困る。女の子の慰め方なんて知らねーし。
だから、俺には絆だって、改めてわかった。
そこで起きました。俺とりゅうが初めてガチで喧嘩した、アレ。
喧嘩っつーか俺が一方的にキレてぶん殴っただけなんだけど……。
りゅうがね、絆に手を出すフリをしたんだって。追い払うために。
りゅうは俺が絆にマジだって知ったら蒼ざめて謝ってきたし。
……一年違うだけで知らなかったけど、あいつと俺の周りは大分違っていたようだ。
りゅうが絆にキスしようとしたって聞いたときはそれこそ――世界が静止した。
音も光も触れるものも一切ない世界に覆われたとすら思ったから。その足でりゅうのことぶん殴った。
未だにあれだけは悔しい。
――俺がもっとちゃんとしてたら、はっきり絆と付き合っていられる立場だったら、りゅうだってそんな勘違いしないですんだのに。
俺にも責任があることはわかっている。
……それでも、ゆるせなかった。
まーその後でふゆとの騒ぎに巻き込まれたのは、若干ざまみろって思ったよ。仕返し心あったよ。
……そんくらい、いいだろ。
……とか思っていたら、俺まで巻き込まれていた。
さすがに泣きたくなったので、絆に泣きついた。
「あんたの周りはアホしかいないの?」と冷めた瞳で見られたよ。
以来、絆はりゅうが大っ嫌い。顔合わせれば罵倒しかしない。
りゅうが一人で消えて、咲桜ちゃんはりゅうを追う道を選んで。
その決断には絆が深く関わっていた。
……のだけど、絆は、咲桜ちゃんの想い人がりゅうだとは知らない。どうすっかねー。
……なんて考えていたら、それはいきなり訪れた。
「なあ、咲桜のすきな人って誰なん?」