中等部と高等部では、大体メンバーは変わらないけど、寮自体は別になる。
だから帰っても一人だった。
そんで、なんでか復活した周囲に集まる人たち。
男子も混じってたっけ? この頃、既に俺は一年留年を決めていた。
高一の四月だ。
特待生どうのの方は、まあ対社会実験も兼ねて方策を考えてみた。
そして何気に、色々企むのがすきであることに気づいた。
テストは受ける。授業は出ない。
そんな生活パターンを決めていた七月、一人の風紀委員が寮に殴りこみをかけてきた。
諏訪山絆。同じクラスの女子らしい。
諏訪山は、寮の部屋にいた俺に一通り説教すると、「明日は学校に来なさいよ!」と睨んで出て行こうとした。
――この瞬間が、たぶん俺の二度目の運命だった。
一度目は、りゅうやふゆに逢った時。
そして二度目は、俺の総てを覆すもの。
今まで、周りに女子がいたことはあったけど、俺は触れたことがなかった。
なのにどうしてか諏訪山には――絆には、触れたかった。
行動は思考を先走り統制されず、俺は部屋から出て行こうとする絆の腕を摑んでいた。
初めて触れる『女の子』は、めっちゃくちゃ細くて、もうこれ折れちまうんじゃねーの? っつーくらい、儚げだった。
……そんなことを思った一秒前の俺、ぶん殴られろ。りゅうあたりに。
腕を摑んでしまったので、絆は勢いにひかれて俺の方を向いた。
その瞳が芯になったような、凛然とした輝きの瞳は太陽みたいで。
儚くなんかない、しっかりした炎みたいなもんが、絆には見えた。
そしてそのまま『何すんの変態!』と、ビンタ喰らった。往復だった。
あまりに痛すぎて、思わず手を離した。
絆はこれ幸いと走って出て行った。
――俺の二度目の運命は、このときだと俺は決めた。
あ、いや別に殴られることに目覚めたわけじゃないからね? 俺が『女の子』と認識するのはあの子だと、俺は決めたんだ。
それからは絆と鬼ごっこのはじまり。
授業サボってると、風紀委員な絆は責任感から探しに来てくれる。
俺は、それこそしてやったりと、わざと見つかりやすい場所でサボタージュ。
一年落とす決心には、なんでか変わりはなくて。
そんなまま、俺は何度も絆に『すきだ』とか、『ちゃんと付き合おう』って言ってんだけど、素行不真面目を知られているからか、絆はマジに受け取ってくれない。
それでも、俺が絆をすきなことを公言していたからか、絆に言いよる野郎がいなかったのは救いだった。