咲桜はわたくしが強く育てる。
在義が結婚するとぬかした相手を見て、そう決意しました。
紹介された相手――当時の桃子は、あまりに弱すぎた。
人間としてではないわ。在義の妻として、という意味で。
夜々子を在義の相手に、と望んでいたのは嘘ではありません。
夜々子が在義を慕っていることも承知していました。
歳の差はありますが、経れば些末(さまつ)なことです。
恋敵である桃子を、夜々子は何故か溺愛しました。
……のちに咲桜が、旦那とした人に『女好き』と言われる原因がその頃にあるような気がしてしまうのはわたくしだけかしら……。
なんか申し訳ない。
桃子は線の細い美人さんでした。
だから、そのままでは駄目だった。
桃子として生きていくのなら、問題はないでしょう。
ありのままに勝るものはないわ。
でも、在義の妻として、在義の娘を産むのなら、強くなければならない。
まだ咲桜がお腹にいる頃の桃子と、わたくしは二人きりで話したことがある。
桃子はわたくしに対して萎縮しているようでした。
それを承知で、話しました。
「桃子。在義の仕事上、お前とお前の娘を、うちで預かることも多いでしょう」
「……はい。申し訳ありませ――
「簡単に謝るんじゃありません」
わたくしが皆まで言わせずに返すと、桃子はびくりと肩を震わせた。
……わたくしはいじめる趣味はないのよ。
「お前には厳しいことを言うと、承知して聞きなさい」