普通の、幸せ……?
「な、なによそれ。なんで私が変な人でも好きになってるみたいな――」
「俺の両親は実の兄妹なんだよ」
「は――……え?」
両親、って……。え? 私知ってるし、普通に夫婦として生活していたわよね? 亡くなっていらっしゃるけど……。
「こっちのじゃない。兄妹なのは俺を生んだ親で、こっちの両親は養父母にあたる」
「……在義兄さん、養子だったの……?」
私の、驚き過ぎて力の抜けた質問に、在義兄さんは「そうだよ」と答えた。
……知らない、そんなこと……。
「箏子先生も俺が養子であることは知っているけど、実の親がどんな人までかはご存知ない。……俺から話したのは、龍生と夜々ちゃんだけだ」
「………」
膝の上に置いた両手が、いつの間にかこぶしになっていた。
「……桃ちゃんには、話さないの……?」
負け惜しみみたいな質問。
それとも優位に立ちたかったのか。
桃ちゃんに同情的な気持ちにでもなっていたのか……今となってはわからないけれど、私の口は動いていた。
「桃には言わないよ。……桃は、そんなことまでは耐えきれないだろうから」
………在義兄さん、わかってるんだ。私が在義兄さんを慕っていることなんて、ずっと。
それでも、私には普通の幸せの方へ行けという。
……自分がそうなれないと思っているから。
なんて傲慢なのかしら。……でも、在義兄さんらしいわ。
すっと、ベンチから立ち上がった。
「お生憎様」
「夜々ちゃん?」
まだ座ったままの在義兄さんを、斜め下に見下ろす。小バカにしたような目で。
「私がどう生きるかなんて、私が決めることだわ。幼馴染だからって、在義兄さんに口出しさせません」
「……夜々ちゃん、」
「私は幸せよ。普通に幸せ。……私は私の生きたいように生きているわ。だからこれからも、私の生きたいように生きるの。在義兄さんから見て、今の私は不幸に見えて?」
にっと口の端で笑いながら問うと、在義兄さんは一瞬驚いた顔をしたけど、すぐに苦笑を浮かべた。
「いや」