……絆の罵倒のレパートリーが、りゅうの所為ですんげえ増えてるよな……。
「本気だって。俺とふゆが保証する」
「……春芽が保証するなら、本当なのね」
そして俺の信頼感のなさ。これはさすがに凹む。お前の旦那になる奴だよー?
「咲桜」
「はい?」
今度絆は、じっと咲桜ちゃんを見た。長身の咲桜ちゃんだから、大分見上げている形になっている。
「……咲桜も変わり者だったのね……」
おーい? かわいい後輩になる子、なんだろー? 絆の流夜評が、咲桜ちゃん評にまで影響しないといいけど。
咲桜ちゃんは少しだけ首を傾げた。
「そうみたいですね。置いて行かれても、追いかけちゃうんだから、向こうにしたらとんだ迷惑ですよね」
りゅうが逃げるためにいなくなったわけじゃない。俺が訂正しようとしたけど、絆の声の方が先だった。
「上等じゃない。困らせてやってちょうどよ。可愛い彼女置いていくようなヤツなんて」
……その言い分には、俺も否定は出来なかった。
「そもそもあいつ、何様なわけ? 咲桜も! もっとバシッと怒ってやんなさいよ。こっちから絶縁状突き渡すくらいで!」
「絶縁⁉ したくないですよっ! しかも私からなんて無理ですっ!」
絆はいつもの調子でりゅうのことズタボロに言ってるんだけど、咲桜ちゃんは相当びっくりしてしまったようだ。声が裏返ってる。
「ん? じゃあ三下り半あたりでいいわ」
「だから無理です~! そもそも三下り半って元は女性が突きつけられるものじゃないですか~」
咲桜ちゃんが泣きそうだった。……絆、可愛い後輩なんだから手加減してあげて。
……俺はなんだかものすごく申し訳ない。咲桜ちゃんに。
「絆。そろそろ仕舞い。咲桜が人格崩壊しそうだ」
えぐえぐと子どものように涙ぐんでいる咲桜ちゃんを見かねてか、涼花さんが止めに入ってくれた。
俺が止めても聞いてくれないのは、話題がりゅうのことだからだ。