在義を最初に、「苛烈」「太陽の塊」と呼んだのは、俺の恋人だった。
在義のことを、怖いと言ったのも。
俺は華取在義とは同い年で同郷の出身。
ただし、向こうは少し厄介。
俺は天龍で育ったが、在義は天龍の生まれであるがすぐに遠方の分家に養子に出されている。
うちのジジイが言うには、だが。
ひかるは在義を怖がっていたが、俺にはその理由がわからなかった。
ガキの頃から見知っているからか……。
ひかるが怖がる理由はわかっていたが、どうしてそれを、それである在義を怖がるのかは、わからなかった。
在義はだんだん黒ずんでいった。
元から黒いくせに、年を経るごとにそれは濃度を増していく。
ひかるは、たぶんそれに気づいていた。
だから畏怖(いふ)していた。
俺はそんな幼馴染が危なっかしくて、結局同じ進路を歩んでいた。
在義は光の世界の中の、黒い部分だった。
影じゃない。闇じゃない。
ただ、黒い部分。
決して白くはなれないそれ。
しかし、光の中でしか生きられない、それ。
苦痛の生き様。
華取在義は、そんな奴だ。
俺の恋人とは、三宮光子(さんのみや ひかるこ)。
高校の同級生だ。こちらは少し説明がいる。
こいつ、空から降って来やがった。
在義と同じ高校に進学してしまった俺は、優等生・在義とは違って腫れもの扱いをされていた。
言うに、俺の態度が悪かったようだ。
在義のように愛想はよくないし、媚びるのは嫌いだし。
「それでいて華取くんと並んで成績トップなんだから、幼馴染にしても両極端なんだよ」。とは、ひかるに喰らった説教のうちの一つだ。
それは話すようになってからの言葉で、それまで俺は、友人らしいものは在義以外にいなかった。
朝、人が群れる時間帯に登校した俺。
突然頭の上から、「猫柳くーん!」という、高い声が響いた。
この学校にその姓は俺しかいない。
かなりの大声で、周囲も変な雰囲気に包まれた。
なんだ? と顔をあげるのと同時に、目の前に人が落ちて来た。