でも、仮に、仮に、あの、ゆう君だったりしたら……、これは、運命?!
いやだ!神様の意地悪。
そんな、出会いは、私には、無理、無理!!私は脳裏に描いた気持ちをかき消すように、ぶんぶんと首を振った。
そもそも……あの人は、ただ、隣に座っただけの人で。私とは、なにも関係なくて。
そうだ、関係ない、人なんだ──。
そう思うと、火照っていた体も、パニクっていた思考回路も、一気に落ち着きを取り戻していく。
ーーーーなんだろう。何で、此処で、あの人を待ってたんだろう。
窓ガラス越しに、ミモザの枝が揺れた。
「そうよ、ミモザの君なんだから!」
「へぇ、今日は、源氏物語?」
背の高い華奢な姿の彼が、私の前に、ミモザの花をバックに立っている。
で、出来すぎでしょ……これ。
「……でも、あれも、後半、光源氏の子供の世代になると、深いというか、重いというか、なかなか読ませるよね……でも、ミモザの君って、出てこなかったよなぁ、確か……」
ん?と、首をひねりながら、私の隣に、彼は、腰をおろした。まるで、自分の居場所のように……。
「い、いえ!」
「え?出てくるの?!」
「そうじゃなくって……そ、外のミモザが、綺麗だなぁって……」
そんなことで、誤魔化せる訳がない。わかっていたけれど、今の私には、そう口にするのが精一杯だった。
「あっ、本当だ。気がつかなかった。綺麗だね」
そう言って、にっこり笑う、彼は、やっぱり、ミモザの君──。
そして……私は、咄嗟に俯いた。
きっと、顔は真っ赤になってる。もちろん、鼓動はドキドキと時を刻んで跳ね上がる。
ーーーー綺麗だね。
なんて、反則だ。もちろん、私に言ったんじゃないって、わかっているけど……。心臓に悪いよ。