次の日も、何だか、あのミモザの君に会える気がして私はいつもより早く、図書館の片隅の椅子に座った。
勿論まだ、彼は来ていない。来るかどうかもわからない。
彼が昨日抱えていた本。
ーーーーサンテグジュペリ。
代表作は誰もが知ってる星の王子様。
昨日は言えなかったけど、私は星の王子様の本を見ると、ある男の子の事を思い出す。
私は小さい時から体が弱かった。特に冬になれば、ひどい喘息の発作と、扁桃腺が腫れて高熱を出しては、何度も入退院を、繰り返してた。
思えばその頃から本ばかり読んでいた。それしかすることがなかったから。
少し動けば息があがるし、熱も出る。かと言って病院のベッドの上で、じっとしているのは、子供には退屈だった。
それに、本を読んでいる間は病院から、外へ飛び出して誰も知らない世界へ旅に出れる──。
小児病棟にある、小さな絵本のスペースが、私の旅の出発地点。
入院している子供たちのほとんどが絵本を、ここから借りて自分のベッドで見るのだけど、私は、窓から色とりどりの花が咲き乱れる中庭が見える、この絵本スペースで読む方が好きだった。