「銀河鉄道の夜。俺も好きなんだよね。子供の頃は、銀河ステーションに行って、列車にのるんだって、思ってた。けどさ、あれって、乗っちゃうと……。あっ、ごめん……邪魔しちゃったね」

「い、いえっ!!」 

私は跳ねた鼓動と同じ位の大きな声で、返事をした。

黒斑メガネの彼は、申し訳なさそうに、こちらを一瞥すると、持っている本に視線を戻した。

なぜだか一瞬、彼に クスッと笑われたような気がして、私は、身を縮こませるように、座り直すと、本に集中しようと試みる。


けれど、なぜだか鼓動は高鳴り続けて、ページは全然進まない。

「……あ、やっぱり邪魔だったよね。……隣に人がいると、気が散るよね」

黒縁メガネの彼は、静かにそう言うと本を閉じて席を立とうとした。

「あ、……違っ」 

ーーーーどうしよう。

上手に返事ができたらいいのに、さっきから 全然会話になってない。私だけが空回りして、相変わらず鼓動も早い。

ーーーーこれって、もしかして、一目惚れってやつ?

まさかね……本の中の主人公でもあるまいし……と自分に言い聞かせるのに、私の鼓動は収まる気配がなかった。

ちらりと彼を見遣ると、少し困ったような顔をして、私を見ていた。