「最後に、小説家ユウ・サイトウがいま伝えたいこと、お願いします」
『えっと、この度はこんな素晴らしい賞を頂き、大変驚いていると共に、今まで出会った全ての方に感謝の気持ちを伝えたいです。
僕は幼い頃から、本が大好きで、よく病院でも本を読んでいました。それこそ朝から晩まで。特に好きな本がサンテグジュペリの『星の王子さま』なんです。
ある日病院で出会った子にいつからか、『星の王子さま』を読み聞かせるようになったんです。僕が王子様で、その子がキツネの役で……。
僕らは、白く狭い病院から抜け出して、いつも本の世界へと旅に出ていました。
……僕ね、キツネの言葉で好きな言葉がありまして、『絆がなければ、本当にしることはできない』ってフレーズなんですけど。
僕にとって、絆は、本のことなんですけどね、本って誰かの心と心を繋いで寄り添える、そんな力があると思うんです。
そして、共に寄り添いながら、本の世界を旅した仲間同士は、本当の友情を分かち合える、そう思うんです』
「その子との出会いと、大好きだった「星の王子さま」が作家ユウ・サイトウの原点ということでしょうか?」
『そうですね、まさしくキツネとの絆が今の僕の原点だと思います。…………え?あ、その子ですか?…………いえ、長く会ってませんので。…………ただ、……あ、やっぱいいです』
「そこまで仰って、読者の方も気になりますよ、最後まで是非、先生」
『あー……そうですか。……じゃあ、一つだけ、彼女と見たミモザの花は、僕にとっては友情の証だけではなかった、とだけ言っておきます』
恥ずかしそうに頭を掻きながら、優しく目を細めて笑う優君の小さな写真のカットでインタビューは、締めくくられていた。