『僕は小さい頃、心臓が悪くて、長い間入院していたんです。何度か手術を受けて、ようやく人並みの生活を送れるようになって…………』

優君は心臓が悪かった。……だから、大学も私より4年遅れて入ったんだ。

初めて優君に会った時、やけにドキドキしたことを思い出して、私の胸は高鳴った。

「イギリスに留学されてたんですよね?」

『はい、そうですね。英文で書いたサンテグジュペリの半生についてのレポートを高く評価して頂いて、急遽留学が決まったんです』


留学……。

あの時、優君は私に何も言わずに姿を消したのは、そういうことだったんだ。

──本に全てを託して。