独り暮らしの寂しさを紛らわせる為、ここが使われているのだ。よって、捕まると、離してもらえない。
見かねた、水川さんが、相手をするようになってからは、その間の仕事は、私にしわ寄せが来ている。
でも、庭に植えている花を季節毎に差し入れしてくれ、読書スペースや、トイレに飾ってみると、結構、評判がよかったりする。
そのなかでも、一番なのは、薔薇の花。驚くほどの種類を持って来てくれる。
なんでもイギリスにお孫さんが住んでいるらしくて、あちらの薔薇園の写真集やボタニカルアートの本など送ってくれるそうで、あまりの美しさにガーデニングにはまったのだそうだ。
「カートは、邪魔にならない所へ寄せておいて、ごめん、おねがいね」
「はい、分かりました。水川さんも頑張ってください」
ははは、と笑いながら水川さんは吉田のおばあちゃんの所へ向かった。
通用口へ向かうと、確かに梱包された荷物が置いてある。
私は、それを黙々と開封すると、中身──、最新刊の雑誌を取り出した。