「てゆうか俺ね、何ていうかさ、窓辺から外の景色みながら静かに本読むの好きなんだよね」 

窓の外にはミモザが、青空の下で鮮やかに揺れている。

「名前聞いても?」

「あ、文学科四年の高野星香です」

「俺は齋藤優、英文科一年」 


彼は顔色ひとつ変えずにそう名乗った。

少しだけ、ほんの少しだけ期待した。あの、ゆうくんだったりして……なんて。

「一年……生なんですね」

大人っぽい。てっきり同じ四年生位かと思ってた。

「あぁ、年は高野さんの1つ上だけどね、ま、宜しく」
 
さらりとそれだけ言うとまた、彼は本に視線をうつすとページをめくり始めた。

さっきの人と話してる時に齋藤さんは、編入してきたと話していた。何か事情があるのだろう。勿論それは私になんて話す気もないし、個人的なことを話す必要もないのだから。

きっと、お互い窓辺から見えるミモザを見ながら静かに本のページを捲るだけ。

そう思ってた。