「華取翁なら、そうだろうな。むしろ知らないわけがない気がする。お前が解決する気になったから、教えた。……ということは、そいつももう墓の下か?」

「病院のベッドの上で、呼吸器で生きてる状態だった」

「そこまでガチで会って来たのか。……大変、だったな?」

気遣う様な全。

流夜は項垂れた。

「ああ……大変だった……」

「その、そう気落ちするなよ? お前のとこは、時効撤廃に間に合って――

「呼吸器を引き抜いて息の根を止めようとする在義さんを止めるの、マジで大変だった」

「………え?」

「在義さん、すっげえ勢いでそいつのこと憎んでて、『一人で来てたら殺してるよ』って昏い瞳で言い切られた……」

「……それってお前が起こすべき行動なんじゃないのか?」

「んー、普通ならそうなんだろうけど……なんつーか、特に何も思わなかったんだよなあ」

「流夜らしすぎるな。そこはもっと……感傷に浸ってもいいんじゃないか?」

「在義さんがすげえ感傷に浸ってて、タイミング逃した」

「華取翁が……?」

あ、やべ。

妻を攫ったヤツだから、とは言えないんだった。

美流子と桃子は別人。

それが咲桜と流夜の間の共通認識だ。

全が思いっきり不審そうな瞳で見てくるが、まあ無視しよう。

――ついさっき、流夜と在義は病院にいた。