「取りあえず、俺を愚痴の相手にするなよ。面倒くさい。あんたの周り、色々いんだろ。剣さんとか」

「……ケンは俺には毒しか吐かないから嫌だ」

「あんたの素行不良のせいだろ」

「ヤンキーだったのはケンの方だ」

「そうみたいだけどな」

天科全と霧原剣は幼馴染だそうだ。

今は穏やかほわほわしている剣は元ヤンらしいが、だからなんだ。

本当、自分を十三への愚痴の相手にしないでほしい。

本棚に背を預けて、全の方を見る。

「天龍のこと、閃が(せん)関わっていることは、よしとしているのか?」

向かい合う形になった全は憮然と足を組む。

閃は全の一人息子だ。

今年高校一年生。咲桜たちの一つ年下だ。

「……同じ学校に千歳(ちとせ)の息子――一応ではあるが――いることは知っていたからな。閃が目を付けるとは――思っていたけどな」

「想定済みならそっちで処理しろよ」

本当言動がいちいちイラッとさせる。

「手に負えん。千歳は治外法権だ」

「手に負えねえなら閃で歯止めかけろよ」

はあ、とため息が出る。

過日――咲桜といちゃついていても在義から叱責を受けなかった日――在義から頼まれたのは、天科全の息子の閃が、天龍の頭目二家の一つ、千歳と蹴りをつけなければいけなくなったから手助けをしてほしいということだった。

天龍の頭目二家。

一つを千歳、一つを影小路(かげのこうじ)という。

今は亡き華取家は、在義が言っていたように拝み屋の家系なので、陰陽道の大家である影小路側となっていたそうだ。

……その対とも言える千歳が関わる問題。

在義くらいでなければ、対応しきれない話では、ある。