流夜は少し驚いた。
「尊に診察させたんですか?」
「琉奏くんは研究者で専門が違うからね。実践で尊くん以上の医者を私は知らないから」
「それは同意ですが……尊はなんと?」
「簡単に言えば植物状態。回復せずに死ぬかもしれないし、今日中に目を醒ますかもしれない。……無理に起こすことは出来ないと釘を刺されたよ」
「……在義さんは、その青年と逢ったんですね?」
「姿は確認した。呼吸器が動いている以外なにもない病室だ」
「俺に、その場所を教えてもらえますか?」
「それは出来ない」
「なぜ」
「君はこの件(ヤマ)に関しては当事者だ。不用意に被疑者と接触させることは出来ない」
「………」
「だが、私は連れて行くことは出来る。私か龍生、どちらかと必ず一緒ならば、そこへ一緒に行くことを止めはしないよ」
「………」
流夜は、ただ頭を下げた。
今の自分はただの『神宮流夜』でなければ、いけない。
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城葉犯研の一室。
所員は所長以下全員でも九人なので、それぞれに部屋が与えられている。
城葉犯研は天科直轄だが、天科グループのトップである天科全と面識があるわけではなかった。
例外で、所長と流夜の二人だけが、顔パスで全に逢うことが出来る。
「あんた年下に絡むのやめろよ」
「お前がさっさとうちに入ってれば俺まで十三に責められなかったんだよ」
流夜が(一応)私室として使っている部屋に、天科全がやってきていた。
と言うか、たまたま流夜が犯研へ来ると部屋にいた。
常に多忙な全は、たまに十三桜の愚痴を言いに来たりする。
傍迷惑。
「桜学もここも、あんたの範囲内だろ」
流夜が書類束を本棚に戻しながら言うと、全は苦い顔をした。
「あいつら、桜学は蒼のテリトリーって認識なんだよ」
「今はあんたが理事長だろ」