「咲桜には、今は知らせないでほしい」

「はい」

在義の頼み事ならば。

……在義がいいと、言うまで。

今は、と言うのならば、いつかは流夜自身から告げることになるだろう。


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咲桜の父親は、華取在義。咲桜の名前は華取咲桜。そして母親は、華取桃子。

それだけだ。それだけが、真実(ほんとう)だ。

流夜が咲桜と再会した日に、咲桜が願っていた人が母になったり妹までいると判明する騒動があったりするあたりは、相変わらず咲桜の周囲は賑やかだなあ、と流夜を安心させた。

そして二年の間に、流夜は一人の黒い鬼の子どもとも出逢ってしていたりした。

彼がすきな子が流夜をいたく気に入ったとかで、ものすっごく嫌われたが。

彼らが流夜たちの関われないところで、流夜たちのよく知る人を導いたのは、終わりまで知らなかった。




END.