「いえ……。俺が関わって然るべき問題です」
「そうじゃない」
「……なにがです?」
在義は視線を床に向けたまま、続けた。
「迷わなかったんだ」
「………」
流夜は黙って続きを待つ。
「病院から、回復したって連絡を受けて、すぐに君に電話をした。……欠片も、躊躇わなかったんだ。君を、あの男と会わせてしまうことを。……流夜くんがどれほどやりきれないか、考えればわかったはずなのに」
……在義の懺悔というものは、初めて聞いた。
「だから、すまなかった」
「………」
なんだか急に、在義が人間に見えた気がする流夜だった。
「ここに来て悪かったとは、思いません。……よかったとも、言えませんが」
どこかで、一つの区切りにはなる気は、する。
「……斎月がいれば、もっとはっきりわかったかもしれませんが」
そう前置きして、流夜は話し出した。
「長くは、もたないと思います。裁判を終えるまで、生きていないかもしれない」
「君がかっ⁉」
在義はよっぽど余裕を失くしているらしく、まさかの誤解をされた。
「なんでですか。あの男ですよ。……心音に嫌な音が混じっていました。俺では、どこが原因か、まではわかりませんが」
機械の制度を持つ弟ならば、その死期までわかってしまうかもしれない。
……嫌な特異能力だ。
「医者はもう気づいているはずです。在義さんには伝えられなくても、担当刑事には……」
これから行われる司法作業に、耐えられるかどうか。
……流夜の勘では、恐らくは否(いな)だ。
「俺も、生きろとは言えません。真実を明るみにして、罪を償うまで生きていろとは、……言えない」
言いたくない。それが本音だ。
「……咲桜に」
在義が俯いたまま言った。