「………」

この手の話になると、流夜は立場が弱くなる。

「面倒なのはお前だよ。咲桜バカめ。僕が咲桜ちゃんだったら流夜なんてとっくに見捨ててるよ」

「………」

壁に手をついて項垂れてしまった。

咲桜ネタではガチで落ち込んでくれるので本当に面白い。

と言うか、バカな弟に巻き込まれて事件に対応、以外で疲れたところも見たことがないので、うん。やっぱり咲桜は貴重な人材。

「家、行ってきたんだって?」

「ん? あ、ああ……」

流夜が虚ろな目で顔だけ向けて来た。

吹雪は机に頬杖をついて斜めに流夜を見る。

「どう思ったの? とかは聞かないから安心してよ。僕だって殺された祖父母がいて育った身だ。……あれだけ猟奇的に殺されたこと、感傷には痛み入るけど逢うことのなかった祖父母には、墓前添える線香しかないよ」

「……お前より辛いのは愛子だろう」

流夜が瞳を細めた。

「そうだよね。でもマナちゃんは何も思っていない。両親がいないことも、自分が産声をあげた状況についても。僕にとっての祖父母――マナちゃんの両親に変わってマナちゃんを育てた僕の両親への恩義しかない。身内だ。そのくらいはわかるよ」

「………」

「そういうとこ、流夜はマナちゃんに近いなあって思ってたんだけど。それ、辞めたいんだよね?」

「……在義さんに、言われた」