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「ねえ流夜、聞いた? 僕、咲桜ちゃんの彼女なんだってー」
イラッとした顔をした。
「その場凌ぎの嘘だろ」
吹雪の配置されている資料室で、くるりと回転椅子を廻して、やってきた流夜をからかった。
流夜も、昼の成り行きは当然のことながら承知していたけど――吹雪が降渡程度の盗聴に気づいていないわけがないのだ――改めて口にされるとむかつく。
あの子は俺の。
「いやー、僕もドキッとしちゃったなあ、さすがに。咲桜ちゃんみたいなかわいー子に抱き寄せられちゃったし」
「俺だってドキッとしたよ。お前が咲桜に気ぃ惹かれたの、わかったからな」
「……あれ?」
吹雪が笑顔で固まる。
流夜は細く息を吐いた。
呆れたように。
「お前の『好き』は見えすぎなんだよ。あいつ以外に好いたヤツがいねえから誰も気づいてないみたいだけど。お前は好意がカオに出過ぎ。見え透いてる」
「……そこまでわかりやすい?」
「いつものヘラヘラ顔してみろ。出来ねーから」
「んん?」
言われて、吹雪は自分の顔をあちこち摘まんでみる。
そして絶望的な声を出した。
「……どうしよう、流夜……僕の表情筋が動かない……!」
「……咲桜に骨抜きってお前な」
「うわー、どうしよー。これは困ったなー。あ、そうだ流夜」
「やらねーぞ。絶対」
「……そういうの決めるのは咲桜ちゃんじゃないの?」
「一日だけ、とか言い出しても許さんからな」
「……よく僕の考えがわかるねぇ」