「そう――美しい鬼のようでもあるし、鬼のように美しくもある。――世界の誰よりも、高い場所に彼女はいる」

「素敵です」

「そ? 大概は意味わかんねって言われるよ?」

「わかりますよ。ほかに例えるものがないほどの――ですよね」

「……やっぱり咲桜ちゃんって話せるよね」

吹雪は何故か少し、嬉しい気持ちだった。





一方、複雑な表情の元彼氏は、幼馴染の不良探偵に連れ出されて実は咲桜の近くにいた。

「……降渡。吹雪だったら別に問題おきねーから心配もしてねえよ」

降渡は、にやにやしながら対面のカフェにいる咲桜と吹雪を見ている。

「心配方面じゃなくて面白方面だよ。二人が何話してるかくらいは気になんね?」

「そりゃ――気にならないわけがねえけど……」

「んじゃ聞いてみようぜ」

降渡が懐から取り出したそれを見て、流夜は半眼になった。

「お前な、盗聴器って」

「いやー、作ってみたら意外と簡単なのな。もっと小型化を目指したい」

「吹雪にばれんだろ」

「それは承知の上。ふゆは面白には付き合ってくれっからさー。今何話してるのかなーっと」

言いつつ、手に収まるそれを操作する。

ジジ、という電波を合わせる音がして、声が聞こえて来た。

言いつつも流夜だって気になる。

片方は幼馴染で、片方は大事な人だ。一体どんな――