「な、な、なななな」

「りゅう、壊れ具合がやばい。落ち着け?」

リアルに壊れたロボットのようになってしまった流夜に、降渡は手をひらひら振った。

流夜、クールダウン。

「――なんだってそんなことになってんだよ」

声を潜めて降渡を睨む。

「咲桜ちゃんの息抜きにふゆが誘ったんだよ。やっぱりお前がいなくて、気落ちしてるからさ」

頬杖で咲桜の方を見ている降渡。

流夜、反論出来なかった。





吹雪の前にはブラックのコーヒー。

咲桜の前には紅茶が置かれている。

「僕と出かけること、流夜何か言ってなかったの?」

「私からは連絡つきませんもん。今は恋人終わりにしちゃったから、文句言われる筋合いもありません」

「………」

もし今の言葉を聞かされていたら、と目に浮かぶような幼馴染のテンパっている姿。

ぷっと笑っていると、咲桜が声をほそく訊いてきた。

「吹雪さんは今はすきな人いないんですか?」

「……僕、そういう女子じみた話苦手だよ。なに、急に」

あまり愉快そうな顔は出来ないが、吹雪は文句を言いつつ付き合う。

「いえ、流夜くんたちと宮寺先生の諍いの理由を聞いたので。まさかほんとーにそういった話だったら私も色々違ってくるので」

「ああ……あのバカげたやつね。そういうんじゃないよ。僕がそういう話に興味ないの、絶対敵わないくらいすきな人が、ずっと前からいるからだよ」

「ずっと、ですか?」

「うん。生まれた時からずっとだよ」

「……マナさん、ですよね? 吹雪さんにとってどんな存在なんですか?」

「そうだね……鬼のように美しい人だよ」

「鬼のように、ですか……」