流夜が自分の家に起こった事件を解決しようと思い立ったのは、咲桜の出生を知ってからだった。
 
在義と血の繋がりのない、ではなく、咲桜の母が神宮美流子であって、父親の特定もされかけたときだ。 

解決を望んだのは自分のためではなく。 

いや、自分をゆるすためだったかもしれない。
 
咲桜が、流夜に対して大きな負い目を負ったのは肌で知れて、それでも咲桜を望んだから。

自分の姿を見るたびに咲桜は傷付くかもしれない。

本当は、もう離れた方がいいことくらいわかる。

それが最善だとも。

自分は偽婚約だけの過去の人になることがよしとわかっていても、咲桜がほしかった。

咲桜に隣にいてほしかった。咲桜の隣に居たかった。
 
血筋なんて関係なかった。

咲桜が拒むなら結婚という形はとれなくてもいい。

一生、傍にいられたらなんでもよかった。

でも、咲桜に自分より近い人がいることはゆるせなくて。
 
決めた。事件を真っ新になるまで解決する。

総てを白日にさらして、咲桜が自分の隣を選んでくれる結果を獲る。
 
衛がもたらした報は、その意思を意志たらしめた。
 
そのために、一時咲桜から離れる覚悟もした。

もし咲桜が望まないのに、自分だけの願望で咲桜を縛ってはいたくない。

咲桜が心から愛する人が出来たなら、その幸せを。
 
――奪ってしまうかもしれない。

それほど強く、流夜の心は咲桜ばかりになっていた。
 
身を引く決意も固めながら、反対の心ではそれを全力で阻止する現実を追う。
 
そんな自分をゆるすため、咲桜が傍にいてもいいと思ってくれる自分になるために。
 
今まで見ていなかった神宮家の事件を、挙げることにした。