「南さん、元気になったの?」


私が問うと、彼は血色の良い顔で少しだけ何かを考えている。
けれど、次の瞬間には、彼は私を安心させるように頷いた。


「ええ、貴女のおかげで元気になりました。今はこうして、夢だった医師として働いてる」


その言葉を聞いて安心した。


「そう。そうなのね。それは良かった。……私が貴方の身代わりになったのかしら。そうなればいいと、確かにさっき、願ったから……」


言いながら、意識が少しずつ曖昧になっていく。なんだかすごく眠かった。


「ありがとう。真田さん」


“真田先生”ではなく、“真田さん”。
なんだかすごくホッとした。本来の私に戻ったみたいだ。


ゆっくりと目を閉じる。
これが現実なら、私は本望だった。


病気の貴方の身代わりに私がなって、そのことにありがとう、と貴方は言ってくれた。
きっと貴方は良い医者になる。
だって、病気だった頃の痛みを知っているはずだから。


心が軽くなっていく。
私はやるべきことをやったのだ、と思う。


少しの違和感と、それをかき消すくらいの満ち足りた安堵に私は沈み込んでいく。


どこかで警報のように、不快な機械音が鳴って、けれどそれを認識することはできなかった。