こうして。
突如としてパーティを組むこととなった俺たち三人のクエストは、無事終わりを告げた。
「二位でしたが」
「あはは。聞いたよー!」
基本的にすめしが無双していたが、途中で状態を整えたりしていた時間があまりにも長すぎた。
それに途中で倒したゴーレムは、倒せること前提で造ってなかったそうで。ポイントに加算されなかったのだ。
「それは骨折り損だったね」
「まぁ、そのお陰でるいちゃんにも会えましたから。結果オーライとも言えます」
ちなみに虐めグループは、あの後すめしが教員へ報告。
アンド、高ランク者からのプレッシャーを与え、るいちゃんと強制的に縁を切らせた。
『今度この子に何かしたら、容赦しないわ』
『ヒ……ッ!』
『るいは私たちのパーティメンバーだから。それがどういう意味なのか、よく考えておきなさい?』
「あのすめしは怖かった……」
「さすがはすめしだね! ナイスプレイ!」
あのクエストから五日後。
俺はカルマさんへの報告に来ていた。
クエスト続きだったので、しばらく休養期間を空けていたのだ。
彼女の顔を見るのはとても久しぶりな気がする。
ざわつくテラスの中。
軽食を食べ終えたカルマさんは、「まぁ二人には先に聞いてたんだけどね」と頷いた。
「るいちゃんとも知り合いに?」
「うん。あの後すめしに紹介してもらってね」
結果だけはそのときに聞いてたと言うカルマさん。
なるほど。なら、細かい部分はこれ以上話さなくてもよさそうだな。
「そのまま、三人でクエストにも行ったんだよ」
「そうだったんですね。どうでした?」
「おっぱいがはずむね! すンごいよアレ」
「それ、間違ってもるいちゃんの前で言わないで下さいよ。絶対委縮しますから」
「え、言ったよ?」
「手遅れだったー!」
「お風呂一緒に入ったとき、言ったよ?」
「俺も入れてー!」
え、三人で一緒にお風呂入ったの!?
パーティ全員で、裸の付き合いを????
カルマさんの美乳Dカップと、すめしの巨乳Fカップと、るいちゃんのメーターオーバーIカップが、一堂に会してたってこと??????
「どうして俺は……、五日間も休養を……!」
「クエスト続きだったからじゃないかな」
そうだけど。
そうだけど、どうして。
「というか。
その場にタマがいたとしても、一緒にお風呂は入って無いと思うよ? 理由ないし」
「まぁそうですけどね」
あの時は両手のケガでうまく身体を洗えないからという理由があったからである。
するとカルマさんは、目を逸らしながら、煮え切らない表情で言った。
「それにその……。
そういう理由でがあったとしても、もう一緒にお風呂は無理かなー……」
「え……、そ、それは……、どうしてです?」
え、俺何か嫌われることした!?
いやまぁ。付き合っても無い異性(もしくは肉体関係の無い異性)と一緒に風呂に入るのは、普通ならおかしいんだけど。
でも、割とあけすけなカルマさんだぞ?
「だってさぁ……」
珍しくカルマさんは、手をもじもじさせながら、こちらをちらりと見る。
「今度一緒に入ったら……………………、我慢できなくなっちゃいそうだし」
「…………え?」
「う……、あ、あははははは! なんてねっ! えへへへへっ!」
勢いよく頭をばりばりとかきながら、立ち上がり食器トレーを持ち上げる。
「今日はこれで終わり! しっ、新作のブラジャー買いに行かなきゃなので!」
「それ絶対嘘でしょ。というか本当でも、そういうことは男の前で言わないでください」
「とにっ、かくっ、それじゃね!」
「あっ……!」
言うと彼女は、とんでもない脚力を持ってして、食堂エリアを後にする。
食器トレーは爆速で棚へ。けれど丁寧に置かれているあたり、彼女の真面目な人柄がにじみ出ていた。
「……うーん? 何だったんだあの態度」
超気になる。
騒がしい太陽が去ったあと、俺がぽつんとテーブルにいると。後ろから今度はすめしがやってきた。
「さっきカルマいなかった? 騒がしい声が聞こえてたけど」
「あぁうん。ブラジャー買いに行くんだって」
「そんなことを大声で……?」
訝しむすめしの表情は、日ごろの二人の関係を物語っていた。
「まぁいいわ。よくカルマも、あの状態であなたに会えたものね」
「うん……? それ、どういうこと?」
「どうせカルマのことだから、この間私たちが一緒にお風呂に入ったこと、言ったんでしょ?」
「おお。聞いてるよ」
だいぶ衝撃だったけど。
まぁそれはそれとして、その入浴に何か関連することなのだろうか。
「詳しく聞いてもいいのか?」
「え……。まぁ、そうね。
まずは私がカルマの背中を流したわ。筋肉と脂肪の付き方が絶妙でね。首筋から肩甲骨まわりの滑らかさと言ったら、まるで大理石のタイルみたいで。けれどもち肌なのか弾力もそこそこあって、つい指先でなぞったとき、カルマが変な声を……」
「違うよ! 詳しく聞きたいのはキャッキャウフフの内容じゃねえ!」
「でもだいぶ聞いてたわよね」
「お前もだいぶ語ったじゃん」
ともかく。
「なんか、俺のことについて語ったのか?」
「ま、そんなところよ。語ったのは私ではないけれどね」
「ふうん?」
となると、るいちゃんか?
「嬉しそうに話していたわよ。
タマせんぱいが私を救ってくれたっていう内容を、それはもういっぱいね」
「う……。な、なんか恥ずかしいな。
別に特殊なことをしたわけではない――――わけでもないけど、その」
でもまぁ、俺が逆の立場だったら、それくらい感謝するかぁ。
るいちゃんが俺に感じてる恩義は、俺がカルマさんに抱えている恩義と同じようなものだろうからな。
「……ん? カルマさんに? 全部話したってこと……?」
「えぇそれはもう。
助けられた状況も。助けてもらった経緯も。そして、あなたがるいに言った言葉の、内訳も全部、ね」
「――――、」
あー……。
それはつまり。
俺が、『カルマさんみたいにカッコよくなりたい』という気持ちも、全部伝わってしまったということで。
そこにかける情熱とか、尊敬とか、重んじる気持ちとか、そういった諸々が全部あの人の中に入ってしまったことになる。
「カルマの顔が真っ赤になってたのは……、まぁ、湯あたりってことにしておこうかしら」
「お前もなぁ……。カ、カルマさんをからかうのも、大概にしとくんだ、ぞ……?」
俺はそっぽを向きながら、すめしに言った。
すると彼女は変わらずクールに、口角を上げずに淡々と。
言葉を、落とした。
「あらお揃いね。――――あなたも湯あたり?」
「…………なんだって?」
食堂は、今日もにぎやかだ。
最後のすめしの言葉は、聞こえなかったことにしておこうと思う。
俺の心の、安寧のために。
第二章
ゲームセット アンド マッチ すめし&るいペア
お読みいただきありがとうございます!
第二章、これにて終了です。
最終第三章は、2月22日(水)朝8時ごろからスタートする予定です!
また遊びにきていただけると嬉しいです。よろしくお願い致します!