さて。
 俺たちは本格的にパーティを組むに当たり、とりあえず手ごろなダンジョンへと潜ることにした。
 ランクは、見習いEランク。
「とりあえず互いのやれることを把握しよー」という提案のもと、身体を動かしつつ作戦会議中である。
 ちなみにランクは俺が提案させてもらった。
 正直このレベルでも、低ランク付与術士(バッファー)である俺一人では、クリアは困難だ。

「カルマさん的にはつまらないかもしれませんが……」
「え? なんで?」
「いや、プロCランクと見習いEランクでは、天と地ほどの差があるでしょ? 出てくるモンスターも弱いですし」
「そんなことないさ」

 ドカン! という炸裂音と共にスケルトンを蹴り飛ばしながら、彼女は振り向いて言う。

「ボクはキミと一緒にいれば、どこでだって楽しいよ!」
「おぅっふ……」

 ハートを打ち抜かれそうである。
 この天然人たらしめ……。

「そもそも、パーティで行動したことなんてほとんどないからね! 未体験は楽しいに決まってる!」
「あぁそういう意味ですか……」

 まぁそれでも。
 悪い気はしてない、単純な俺がいるんですが。

「しかし……、パーティ。パーティですよね……」

 改めて、ふと思う。

「俺、何をする係ですか?」
「ん?」

 ズガン! という打撃音と共にゴブリンを蹴り飛ばしながら、彼女は言った。

「俺とパーティを組んだってことは、俺にも何か役割があるってことですよね?」
「まぁそうだねー」
「でも改めて考えると。
 これまでの俺の生命線だった魔法――――『防御上昇(ハーデン):C』は書き換わっているんですよね」

 今では『ボール出し』とかいう、よくわかんないスキルだ。
 分類としては攻撃魔法になるのだろうが……、分類が不明過ぎる。

「既に俺、付与術士(バッファー)でも無くなってるんですが」
「じゃあボール出しだね」
「ボール出しが職業って何なんです!?」
「あはは。でもすごい威力だったじゃない」

 バコン! という快音と共にオーガを蹴り飛ばしながら、彼女は言った。
 いや……。さっきから一人でこの破壊力を出せている人物が言っても、まるで説得力が無い。

「そもそもタマはさ。付与術士(バッファー)って言っておきながら、バフ魔法は防御上昇(ハーデン)くらいしか無かったじゃん?」
「い、痛いところを……」

 一応魔法上昇(マジカロ)攻撃上昇(ストラク)もあるにはあるけど。でもこれも、Eランクだし、効果時間もかなり短い。

「カルマさんって、魔法耐久は低いですけど、魔力値はCだからある程度は高いんですね」
「そうだよー」
「物理攻撃も高いし……。
 なら、魔法上昇(マジカロ)とか攻撃上昇(ストラク)で、一瞬パラメーター上げるのはアリなのか……な?」
「うん。アリだね」

 あのキックには、物理攻撃だけではなく、魔法攻撃も含まれている。
 通常のAランクだけでも強いほうなのに、そこに魔法値まで加わってくると、実質A+ランク以上の威力が出ているのではないだろうか。

「強いわけだ」
「あはは! 攻撃全振り女と呼んでくれたまえ!」

 彼女の性格がそのまま反映されているパラメーターだと思う。
 それぞれのステータスは、本人の気質や元々の身体能力にも左右される。
 職業ごとに育ちやすいパラメーターがありはすれど、それも千差万別だ。けっこう個人差も出る。

「そういえばカルマさんって、何の職業でしたっけ?」

 物理攻撃と魔力値が高いから、魔法騎士(マジックナイト)とかかな?
 職業適性でその職に就いていて、武器を使わないスタイルの人もいるらしいし。

 そう予想しつつ聞いてみると。帰ってきた答えは驚きの単語だった。

「ボク? 斥候(スカウト)だけど?」
斥候(スカウト)の出す火力じゃねぇ!?」

 あまりの答えについぞ叫んでしまった。
 階段内にきーんと俺の声がこだまする。
 いつもあっけらかんとしているカルマさんも流石にうるさいと思ったのか、やや顔をしかめている。

「あ、いや、大声を出したのは謝りますけど……。
 でも、やっぱ驚きますって」

 斥候(スカウト)職とは本来、ダンジョン内に仕掛けられた罠の発見や解除、扉の解錠や地形の把握など、戦闘以外で役に立つような職業である。
 戦闘手段や攻撃方法もあるにはあるが、最低限の自衛スキルみたいなものであり、本来ならば最前線に立つ職種ではない。

魔法騎士(マジックナイト)じゃなければ、せめて武闘士(モンク)あたりなのかと……」
「それじゃあソロで潜りづらいからねぇ」
「あー、確かに」

 俺たち『冒険者』は、自分に合った職業の勉強を行ったりもする。
 勿論個々人によって身体能力も違うため、自分に合った職種に就いたりするのだが……、なるほど。カルマさんは『一人でも活動出来るため』の職業を選んだのか。

「回復や攻撃は、アイテムを駆使すればどうにかなるけどさ。
 フィールドの罠察知や気配察知は、どうにもならないときがあるじゃない?」
「まぁ……、気づく能力があるかどうかですもんねぇ……」
「ボクは割と雑だからね!」
「あ、はい。それはもう、痛い程に……」

 先日の風呂場騒動を思い出す。
 見切り発車とかその場のノリで決定とか。
 雑というか、考えなしに突っ走る部分が見られるのだ。
 しっかり者のお姉さんキャラは、まだ遠そうである。

斥候(スカウト)の能力があれば、多少は冒険(クエスト)の補助になるかと思ったんだよね」
「多少、ですか……」

 斥候(スカウト)職は、けっこう几帳面だったりマメだったりする人が適任とされている。何故なら、知らず罠にかかってしまったら、モンスターに襲われるよりも致命傷を受けることもあるからだ。
 だからこそ斥候(スカウト)職は、常にフィールドやダンジョンの状態に気を配れる人が良いとされているのだが……、今の発言から察するに、おそらく彼女は違うっぽいですね。

「うん。前に逆さづりのトラップ食らってね。そこまでならまだ良かったんだけど、その後近くに居たローパーに触手攻めされちゃった」
「フルコースじゃないですか」
「目覚めなくて良かったと思う」
「目覚めるって何にですか。新たなる能力ですか」
「ある意味新たなる扉だね。いやあ、半開きで良かったよ!」
「目覚めかかってるじゃないですか」

 ともかく。

「ボクは斥候(スカウト)に向いてない!」
「言い切った!」
「でもこの素早さはありがたい! だからボクは、前衛専用の斥候(スカウト)になることに決めた!」
「潔い!」

 ……まぁでもこんな風に。
 自分の能力をはっきり話すことが、俺には必要だったんだろうな。

「まぁ、とにかくさ。ボクはスピードで敵を翻弄しないと、敵と戦えない」
「えっと……?」
「さっき倒してたモンスターもそうじゃない? やつらが攻撃モーションに入る前には、既にこちらが攻撃を終えている」
「あぁ確かに」

 それもスピード、か。
 移動や回避だけでなく、攻撃のスピード。攻撃に移るスピード。思考の速さとも言える。

「だからその分、ボクは軽めの服に身を包んでいる。
 防御で使う鉄鋼も、軽鎧もつけてない」
「なるほど……。そうですね」
「装備してるのは……、コレだけだよ」

 カルマさんはコンコンと、自分の装備である脛当て(グリーブ)を小突く。
 確かに。
 彼女はかなりの軽装で、肩出しへそ出し太腿出しと、布面積だけでいえばかなり少なめな格好をしているのだが――――膝から下だけは違う。
 そこだけ西洋の鎧である、脛当て(グリーブ)及び鉄靴(サバトン)を装備している。
 そのためだろう。彼女に薄着のイメージが無いのは。

 流線を描く鉄の脚は、おそらく彼女の足の形にぴったりとフィットしているのだろう。
 地肌でもないのに、どこか艶めかしささえ感じさせる。そんなカーブと色合いだった。

「遠縁の親戚の家にあったらしくてね。譲ってもらって、軽量化した」
「そうなんですね」
「せっかくならオーダーメイドしてみたいじゃん!」
「まぁ憧れますけども」
「サッカー選手の時の取材費とかを、全部投げ打ったからね!」
「そんなことを!」

 まさかメディア関係者も、鎧の改造費にギャランティが消えることになったとは夢にも思っていないだろう。

「まぁ話は逸れたけど、ボクの能力はそんなところ」
「俺は結局、『ボール出し』という新たな職業になるワケですか……」

 職業自体はそのまま付与術士(バッファー)だけれども。

「まぁまぁ、タマは切り札だよ」
「切り札ですか……」
「あの濃いの出しちゃうと、しばらくぐったりして立たなくなっちゃうもんね」
「立()なくなるんです! 変な言い方しないでください!」
「変な?」

 どうやらわざとではなさそうで、それはそれで問題である。

「何だか疲れちゃったね」
「俺は主に、見たことも無い光景を目にしているのと、ツッコミ疲れですけどね……」

 何せ、これまでは逃げ惑うしか出来なかった上級モンスターたちが、紙屑のように散っていくのだ。
 心が休まらない。
 それに……、

「休憩にしようか」
「分かりました」
「じゃあ魔物除け(コレ)、向こうにセットしてきて」
「はい」
「こーやって開けるんだよ?」
「……ッ! は、はい……」

 なんかこう。
 距離が近い。
 元々ずかずかとパーソナルスペースに入ってくるような近さがあった彼女だったが、パーティを組むと決まって以降、更に物理的な距離は近まっていた。

 今なんて完全に彼女の肩と俺の腕が触れ合ってたぞ。
 ゼロ距離・真横である。
 薄着なのが、この間の風呂での光景をフラッシュバックさせ、更に煩悩を刺激した。

「イっていいよ?」
「え!?」
「ん? 使い方分かっただろうから、持って行っていいよ~ってこと」
「あ、あぁはい……。い、イッてきます……!」

 俺はカルマさんから魔法筒を受け取り、フィールドの四方へと設置していく。
 向こうもどうやら終わったみたいだ。
 これでこの四方には結界が張られ、一定時間魔物は近寄れない。

「さて、何か食べよっか。持ってる?」
「多少は持ってきてます」

 俺は掌をアイテムボックスと呼ばれる異次元に突っ込んで、アイテムを取り出した。
 魔力が通ったアイテムなら、何でも収納できる空間魔法だ。
 冒険者見習いになるとき、最初に魔力を身体に馴染ませる行程がある。
 俺たちはダンジョン内(というか魔力のある場所)では、魔力を全身に行きわたらせて身体能力を上げている。
 それと同時に、このアイテムボックスの魔法を使えなければ、冒険者見習いにすらなれないのだ。

「ランク低いと、アイテムボックスの量も少なくて大変でしょ?」
「余計なもの入れられないですからね……」

 このアイテムボックスの魔法は、自分の冒険者ランクで変わってくる。
 ランクが上がっていけば多くのアイテムを持ち歩けるようになるのだが、先はまだまだ長そうだ。

「この間Eランクに昇級し、最底辺のランクは脱出しましたけど。
 それでもFからEって、ほとんどやれること変わらないですね」

 パラメーターも、上限が上がるだけで、いきなり身体能力が爆上がりするわけではない。
 アイテムを持ち運べる数も、ほとんど同じだ。

「でも、けっこう効率イイアイテム選びをしてると見たね!」
「まぁそうですね……。状態異常回復と、魔力回復の薬を何本か。
 魔力さえ回復出来れば、自分で回復魔法が使えますから」
「だよね~。全体回復もあるし、サポート役としてはとても良いスキル構成だと思うなぁ」

 座っておいしそうに簡易食(ポケットフード)を食べつつ、カルマさんは言う。
 それを受けて、ふと思った。

「カルマさんは、俺の事けっこう知ってるんですね」

 休憩を始めた彼女に習って、俺も近くの手ごろな岩へと腰掛ける。
 四方の空間はやや狭いから(本来ならば一人用の魔物除け範囲なのだ)、足が当たりそうになるな。
 そう考えた矢先、食べ終えた彼女は脚の鎧を外しながら、嬉しそうに返事をした。

「うん。さっきも言ったけど、けっこう調べたよ」
「マメですね……」
「引いた?」
「最初は、ちょっとだけ。でも、嬉しくもあります」
「えへへー♪」

 にへらと可愛らしく笑うカルマさん。
 戦闘時と、時折見せる狂気的なまでの真っすぐさからは、想像できない愛嬌があった。
 ますます小動物めいてるな……。

「キミは、ボクのこと全然知らなかった?」
「素性は知ってましたけど、戦闘スタイルや性格まではあまり……」

 俺が知る騎馬崎 駆馬は、
 一歳上で、同期で、高校一年の時にサッカー部を優勝に導いていて。
 光飛び交う記者会見で、冒険者を目指すことを宣言して――――学園内で、『素行不良』の生徒をやっていると。

「こんな感じですかね……」
「あはは! だいたい正解だよ!」

 前にもちらりと説明したが、俺と彼女は時を同じくしてここへ編入した。
 つまり、まだ一年しか冒険者見習いをやっていないのだ。

 それでも。
 俺はようやく最低から一歩だけ出た見習いEランク。
 彼女は、トップ一歩手前の見習いBだ。
 一年間でランクが上がらないのも珍しいらしいが、一年間でそんなところまで行けるのもまた、聞いたことが無いとの話である。

「しかも噂によると、素行不良でランクが上がってないだけ……らしいですが」

 実は彼女。
 こんなにイイコのように見えて、素行不良の烙印を捺されているのだ。
 その理由はとても簡単。
 ダンジョンの実習や攻略には赴くが、それとセットになっていたり、必修科目の座学に、一切出ていないのである。

「うん。だって授業に出ても効率悪いからね! ボクはほぼ独学だよ!」
「純粋に嫌味にしか聞こえないんですが」
「あはは! 嫌がらないでよ。パーティじゃん」
「嫌がることと仲良くすることは別ですけどね」
「じゃあ仲良しだね! やったー!」

 カルマさんは笑って、完全に量の足から鎧を外し切っていた。

「おぅふ……」
「ん? どうかした?」
「いえ」

 あの風呂場では、肌面積が多すぎて気づかなかったが。
 改めて彼女の、『脚』のディティールを目の当たりにする。

 親指ってあんなにエロいの……?
 え、女子だから!? 女子の親指だからエロく感じるのか!?

「うぉ、ぉぉんん……」
「何の嘶き?」
「いえその……。心臓を落ち着けているのです」
「あはは。
 ……タマはときどきエッチになるな~」

 見ていたのはバレバレだったようです。
 だって綺麗なんだもん……!
 ちなみに表に出さないよう気を付けてるだけで、基本煩悩は高めなほうですよ?
 俺はそんな、沸き上がってくる煩悩を退散させるため、無理やり話題を変えることにした。

「そ……、そういえば。カルマさんこの間のテスト、また掲示板に載ってましたよね」
「あはは。あんなのどうでもいいよー」

 彼女はぐっぐっと座ったまま柔軟運動をしながら、朗らかに笑う。

「ランク評価に関係なかったら、絶対テキトーにしかやらない自信があるよ」
「そんな自信あっても」
「自分のことは自分が一番よく分かってるさ。
 やらなくて良いことは手を抜く女だよ、ボク」
「自信満々すぎる……」
「台所とか汚いし」
「そうなんですか?」
「家の中にゴーストタイプのモンスターが出たと思ったら、食器の汚れの塊だったよ」
「それはもう掃除を一切してない人の台所ですね!」

 ツッコミを入れる俺を見て、カルマさんはあははと笑う。
 しかし本当によく笑う人だなあ……。

「ボクはボクの生きたいように生きる」
「何だろう……。当たり前の主張なのに、この人が言うと危険思想みたいに思えてしまう……」
「別に危険思想でも何でもいいよー。
 どうあっても変えられないし、この性格」
「うーん、なるほど……」

 人当たりがよくて人懐っこい。
 太陽のような笑顔を持っている小さい美少女お姉さん――――なのだが、だからと言って、イイコであるかと言われるとノーだ。

「なんだこの美少女。罠すぎるだろ」
「誉め言葉かな?」
「まぁ……、半分くらいは褒めてます」
「いつでも褒めてくれていいよ!
 ボクは褒めるのも好きだけど、褒められるのも好きだから!」

 ではどうして学園では褒められる行動をとらないのか。
 ほとほと謎だった。
 ため息をつきつつ、そういえばと思い浮かぶ。

「カルマさんの一人称って、『ボク』ですよね?」
「ん? そうだね」
「もしかして男の人扱いして欲しかったりとか、女扱いして欲しく無かったりとかします?」
「え? いや、ボクはどっからどう見ても頼れるお姉さんだけど?」
「最近では男性でもお姉さんやママになりえるみたいですが」
「そうなの?」
「メス男子なるジャンルがあるとか」
「ほうほう。オネエ的な?」
「それとはまた別みたいですね。ここで言う『オス・メス』という単語は、どうやら『男性・女性』という区切りではないようです」
「ふうん……? じゃあ、オスオネエみたいなのも成立する?」
「そうですね。してますしてます。
 メスオネエなるジャンルもあるみたいですから」
「メスでオネエって……、それはもうお姉さんなのでは?」
「男性なんですって」
「日本語って難しい言語だよね……」

 若干話は逸れたけれど。

「まぁうん、ボクは女の子だよ? 頼れるお姉さんキャラさ!」
「はぁなるほど……」

 ふふんと鼻をならすカルマさん。
 ドヤった顔はお姉さんというよりも背伸びしている妹といった感じでかわいくはあるのだが。
 なんにせよ。彼女は女性ということで良さそうだった(とても頭の悪い日本語)。

「あはは。一人称の件かぁ」

 言ってカルマさんは、素足をぱたぱたさせながら、邪気の無い顔で笑う。

「一人称だけじゃないさ。ボクは、今この瞬間に口に出したいことを、ただ出してるだけだよ」
「口に出したいことですか……」
「次の瞬間には『アタシ』になってるかもしれないけど、それだってボクなんだよ。
 それに、どっちかというと、やりたいこと優先って感じかな?」
「やりたいこと?」

 そう。と彼女は頷いて言葉を続ける。

「今は冒険者やってるけど、もしかしたら次の瞬間には違うことをやりたくなってるかもしれない」
「また、次の瞬間には、ですか」
「冒険者以外の生き方を見つけるかもしれないじゃん?」
「はぁ……、例えば?」
「お嫁さん?」
「どの面下げて言ってるんですソレ」

 あなた確かさっき、台所にゴーストタイプのモンスターを飼ってるとか言ってませんでした?
 確かに、明るく朗らかで、笑顔の似合うお嫁さんはイイかもしれないが。
 しかし残念ながら、そこから飛び出す料理には、狂気が混じっているかもしれないのだ。

「そうだね、何故かボクの料理は壊滅的なんだよ」
「何故かも何も、台所のせいじゃないですかね」
「でもボク、意外と尽くすタイプなんだよ?」
「尽くすって何をですか? 焼き尽くすタイプですか?」
「あはは! タマは意地悪だね~。じゃあキミと結婚したら、毎晩鉄くずを食べさせるよ! そして体を縛って蝋を背中に置いて、一生ベッドの上で四つん這いで過ごさせるね!」
「猟奇的!」

 ギャグにしても、発想が恐ろしかった。
 明るく朗らかに、笑いながら言うセリフではない……。
 それも、言いたいから言っただけなんだろうけど。

「閑話休題です」
「休めるかな?」

 とにかく。
 だいぶ話が逸れたけれど。
 天真爛漫で笑顔が可愛くて、でも時に狂気的で超戦闘能力を有する、サッカー界の元スターは。
 この一年間で、トップクラスに上り詰めたのだった。
 もしかしたら、実力だけならプロの中でも上の方かもしれない。

「改めて、よく俺と組んでくれましたよね……」
「組みたかったからね!」

 えへんと小さな胸――――じゃないんだった。身長の割には意外とある胸を張り、彼女は言う。

「それも、やりたいからやったことさ!
 ボクはキミと冒険がしたかった! だからよろしく!」

 言って彼女は素早い動きで、四隅の魔法筒を取っ払った。

「ちょ!?」

 途端、周囲のモンスターが一斉にこちらを向く。
 魔物除けは完全に機能しなくなっているので、当然である。

「戦いたくなっちゃったから休憩終わり!」
「そこはパーティメンバーに相談してくれませんかね!?」
「いっくぞー! あはははは!」

 そうして。
 ダンジョンには快音が響き渡る。

 騎馬崎(きばさき) 駆馬(かるま)の生態に。
 とても気分屋という情報を、追加しておいた。








プロフィール・2


名前:騎馬崎 駆馬(カルマ)
身長/体重:149センチ/40キロ
職業:斥候(スカウト)

物理攻撃:A  魔法攻撃:C
物理耐久:F  魔法耐久:E
敏捷:A+++ 思考力:B
魔力値:A   魔吸値:B+

常時発動(パッシブ)能力(スキル)
攻撃上昇:B、敏捷上昇:A、全体敏捷上昇:A


任意発動(アクティブ)能力(スキル)
白い足(シンデレラ):A+、罠解除(リフター):E、罠感知(センシグ):E
回復術(トリトム):E、状態異常回復術(リカバー):E、