「え……」
「勝手に争って勝手に衰退してを繰り返しているのが人間ですわ。でも、わたくしたちは一族を何より重んじます。そして、」
「恩人である梅乃様は、もうわたくしたちの『大事な存在』なのですわ」
「……―――」
梅乃は言葉に詰まった。
言葉にならないほどの感情があふれて――泣いてしまった。
それを見て、今度は鬼の女性たちが慌てだした。
「う、梅乃様!」
「だ、大丈夫ですわ! 梅乃様がおいやでしたら人間を襲撃はいたしませんわ!」
「ちがっ、あの、ごめんなさい~」
「梅乃様ぁ~わたくしたちまで泣いてしまいますわ~」
突然号泣しだした梅乃と、周りで困ってしまう鬼の女性たち。
その外側に陣を作っていた鬼たちも、なんだなんだと寄って来る。
「おお、ずいぶん盛り上がって……盛り上がりすぎてない? なにがあったの?」
苑の治療のために遅れてやってきた冬芽は、ふすまを開けるなりびっくりした。
梅乃と周囲の者たちが泣きまくっている。
「おいおいお前たち。歓迎しろとは言ったが、泣かせろとは言っていないぞ」
人波をかき分けて梅乃のもとへたどり着いた冬芽は、梅乃の脇に膝をつく。
「申し訳ありません、冬芽様~」
「あのっ、わたし、が、泣いちゃった、だけで、みなさん悪くないんですっ」
嗚咽しながら言う梅乃の背を、落ち着かせるように軽くたたく冬芽。
「そうか。口に出来ることがあったら、なんでも言ってくれ。俺たちは、あなたに礼がしたい――あなたの役に立ちたいんだ」
「そうですわ、梅乃様」
「なんでも仰ってくださいませ!」
梅乃はまだのどをひくつかせながらも、口を動かした。
「私の周りに、私のためにとか、言ってくれる人も、心配してくれる人も、いたことなくて……わたし、どうでもいい子だったから、みなさんが『大事な存在』って言ってくれたのが……う、嬉しくて、嬉しくて……心がいっぱいになっちゃて……」
手の甲で涙をぬぐう梅乃。
涙は次々あふれてくる。
その涙を見て、冬芽は久方ぶりに優しい気持ちになった。