「梅乃様はお優しいのですね」
「さ、様!? そんな呼び方はやめてくださいっ」
驚いた梅乃が否定するが、女性たちはそれに否定し返してきた。
「いえ。これは譲れませんわ」
「わたくしどもは一族を何より大事にいたしますの。苑を助けてくださった梅乃様は、我ら一族の恩人と言っても過言ありません。……冬芽様づてに少しだけ聞いたのですが、何か辛いことがおありでしたの?」
「―――……」
尋ねられた言葉に、梅乃は唇を噛んだ。
それを見て、発言した女性はそっと眉尻を下げた。
「わたくしどもは人間の世に手出しは出来ませんが、お話をうかがうくらいはできますわ。もしよろしかったら、話してみませんか?」
鬼の女性たちに言われて、梅乃はきゅっと目をつぶった。
そんなこと言ってくれる人、自分の周りにはひとりもいなかった……。
「い、いじめに、遭ってるんです……」
「いじめ……」
「はい……。ものを隠されたり盗まれたり、教科書も捨てられて私が先生に怒られたり、お弁当をゴミ箱に捨てられたりして……」
悔しさがあふれてくる。
梅乃の話を聞いた女性たちはこぶしを畳にたたきつけた。
「そんな……!」
「赦せませんわ、そのようなこと」
「みんな、梅乃様をお守りするためよ、攻め入りましょう!」
「ええ!」
「もちろんですわ!」
「ええっ!? さっき人間の世界に手出ししないって言いませんでした!?」
いきり立ち上がる鬼の女性たちに言動にびっくりした梅乃。
「大丈夫ですわ、梅乃様。証拠は残しません」
「いやいやいや! そういう問題じゃないですよ! 鳥さん助けた私のために人に攻め入るって!」
「梅乃様、誤解のないように言っておきますが、我ら、人間はどうでもよいのです」