「そうなんですか……。あの、今度鬼の皆さんがどんな風に暮らしてるか教えてください。わ、私も皆さんと一緒に何かしたいです」
「ああ、もちろん。ではその話は次に梅乃が来てくれたときにしよう」
「はい。送ってくださってありがとうございました。冬芽さん、お帰り道気を付けてください」
「梅乃もな。……ひとつ言い忘れたが、梅乃にその装束はよく似合っている。自信をもって前を向いていていい」
「ありがとうございます。……では……」
言って、けど何回か振り返る素振りを見せながら、梅乃は鳥居をくぐった。
次に梅乃が来たらどんなことをしようか。
そんなことを考えるのが楽しみで、冬芽の口元には笑みが浮かんだ。
「冬芽様」
かなり間隔をあけてついてきていた側近が声をかけてきた。
「うん。無事に帰ったようだ」
「よかったです。では私どもは準備に入ります」
「梅乃が次に来た時の、か?」
「いえ。梅乃様を花嫁として迎え入れる準備です」
「……え?」
側近の言葉にきょとんとする冬芽。
側近はこぶしを握って力説しだした。
「梅乃様のあのご様子、脈はありますよ、冬芽様」
「え、あの、なんでそんな話に? つかお前ら、桃子は大反対だったろうが」
「冬芽様、お言葉ですが、私どもは冬芽様より冬芽様のことに詳しいのですよ。冬芽様はご自覚がないかもしれませんが、居場所がなかった桃子様に同情から居場所を与えようとしたのと、梅乃様にいだいていらっしゃる感情が違うことは一目瞭然です。よかったですね」
……は?
「おい待て。何がどういいんだ」
「冬芽様に無理やりご結婚をしていただくのは我らの意に反しますが、お相手様と相想い合われているならば、相手の種族など関係ありません。私どもがばっちりお膳立ていたします」
「え、えー……」