「お恥ずかしいところを……」

泣きまくったことを恥じ入る梅乃は、冬芽に鬼の里への出入り口まで送られている途中だった。

梅乃の身を案じた鬼たちが全員、梅乃の見送りに挙手したが、頭領の立場と最初に出会ったことを理由に冬芽がその座を手にしていた。

みんなから睨まれた。

梅乃が走って逃げた山の中。

木が生い茂っていて昼間でもうす暗いが、冬芽が歩く先を照らす灯りを妖術で先に飛ばしていて、二人はそのすぐあとを歩いていた。

梅乃がここへ一人で入るようになったらこの術は自動的に発動し、梅乃を鬼の里まで導くように、すでに組み込んである。

「いや、だいぶ顔つきが明るくなったよ、梅乃。あの様子のまま返していたら、俺が苑たちに頭領を追われるくらいのことをされていた」

梅乃はおそらく、年齢相応よりは小柄だろう。

冬芽とはだいぶ頭の位置に差があった。

「そんな大事に……あの、冬芽さんっていつ頃頭領になったんですか?」

「俺か? んー……六百年くらい前、か?」

「ろ、ろっぴゃくねん!? え……冬芽さんって何歳……なんですか?」

「生まれてからだと千年くらいかなあ」

「せん!? ちょ、長寿なのも、鬼だから、ですか……?」

「そうだな。妖異の種族にもよるけど、鬼は長命な者が多いな」

鬼の頭領の中に、鬼頭(きとう)と呼ばれる者がある。

他の一族にもその力の強大さを認められた鬼の頭領で、先ごろ頼った黒い陰陽師は、鬼頭であり鬼神(きじん)とも呼ばれた鬼の息子だ。

鬼神は、冬芽なんかよりよっぽど長く生きていただろう。

「梅乃、明後日には苑も外を歩けるだろうから、また顔を見せてくれないか?」

「いいんですかっ?」

「もちろんだ。皆、梅乃が来てくれるのを心待ちにしているよ」

大きく肯く冬芽を見上げて、梅乃はふわっと笑った。