「へ? 何持ったんですか?」

咲桜が真顔で返すと、言った当人は吹き出した。

「いや、荷物じゃなくて、人気あったでしょ? ってことです。告白とかどれぐらいされたんですか?」

そう問われて、やっと意味を理解する。

自分には縁遠い言葉で、すぐにはつながらなかった。

そして所員全員、興味津々の様子で見て来る。

「一回もないですよ」

「え……」

「告られたとか、……デート誘われただけでもいいですよ?」

「いえ、だからそういうの、一度もないです」

咲桜が答えると、「ええええ――――っ⁉」と非難に近い声色で所員が叫んだ。

咲桜は思いっきりびくっと肩を跳ねさせた。

「そ、それはないでしょっ!」

「こんだけの美人放っておくって……咲桜さんの学校は節穴の目しかいないんですかっ?」

「あの、本当にないんですけど……」

咲桜が泡喰って押さえようとするけど、全然効果がない。

告白を受けたことなんて一度もないのは本当なのに……と困っていると、室長の机で咲桜が自分用に詰めてくれた弁当食べる流夜が口を開いた。

真実を。

「咲桜が男どもに人気あったのは確かだけど、告白とかされてないのも本当だ」

「え……室長は何を知ってるんですか?」

「咲桜は高一当時からこの見た目だし、料理も上手いから男子連中には好意の目で見られてたけど、一つ問題があってな」

「な、なんですか?」

「学校一問題児で、学年主席の男子生徒の飼い主、だったんだよ」

『………は?』

「それって、頼のこと?」

咲桜がその名前を出すと、所員の顔色が悪くなった。

咲桜も、頼がここへ突撃したことがある、とは聞いている。

何やったんだあいつ……。

「そう。日義頼を制御出来る唯一ってな。咲桜に惹かれても、彼氏にでもなれば頼までついてきそうで敬遠されてたってことだ」

『そ、そうなんですね……』

所員が一気にトーンダウンしていた。

「流夜くん、そうなの?」